Google Stitch はグラフ・チャートを含むUIを作れるか——データダッシュボード設計の実態と限界

ダッシュボードを作りたい、というリクエストは多い。売上の推移グラフ、ユーザー数の棒グラフ、完了率の円グラフ——数字を視覚化する画面は、どんなサービスにも必要になる場面がある。

Google Stitch を使い始めたとき、「ダッシュボードもStitchで作れるのだろうか」と思った。早速試してみると、「できることとできないこと」の境界線がはっきりあることが分かった。その境界線を知らずに使い始めると、思ったより手間がかかる。逆に知っていれば、Stitchはダッシュボード設計の強力な起点になる。

この記事では、Google Stitch でデータダッシュボードおよびグラフ・チャートを含むUIを設計した経験をもとに、実態と限界を正直に整理する。

結論から言うと

一言で言えば、Google Stitch はダッシュボードの「レイアウト設計」と「視覚的なたたき台」には非常に向いているが、「インタラクティブなデータビジュアライゼーション」は生成できない。静的なグラフの配置・見た目のデザインは出力できるが、実データを流し込んで動くチャートコンポーネントの生成は対象外だ。

この前提のもとで使えば、Stitch はダッシュボード設計の初期フェーズで非常に大きな価値を発揮する。ゼロからFigmaで組むよりはるかに速く、「どんなレイアウトにするか」の議論を始められる。

Google Stitch でダッシュボードUIを作ってみた

実際に「売上管理ダッシュボード」のUIをStitchで作ってみた手順を記録する。目標は、月次売上グラフ・日別アクセス棒グラフ・商品カテゴリ別円グラフ・KPIカードを含む管理画面のレイアウトを設計することだった。

プロンプトと生成結果

試したプロンプト:「EC事業者向けの売上管理ダッシュボード(デスクトップPC用、1440px幅)。上部に4つのKPIカード(総売上・注文数・平均単価・返品率)。中央左に折れ線グラフ(月次売上推移)、中央右に棒グラフ(日別注文数)。下部に円グラフ(カテゴリ別売上比率)と最新注文リスト。配色はダークネイビー×ホワイト×アクセントグリーン。」

結果:1回の生成で、レイアウト構造はほぼ意図通りの画面が出力された。KPIカードが上部に横並び、グラフエリアが2カラム、下部にリストという構成が自然な形で生成された。デザインとしてはプロフェッショナルな印象で、クライアントへの初回提示には十分なクオリティだった。

ただし、グラフ部分は「それらしい形状のシェイプ」で表現されており、実際のデータが入った動的なチャートではない。折れ線グラフの線は固定された形で描かれており、棒グラフの高さは模擬的なものだ。実際に使ってみて分かったのは、Stitchのグラフは「グラフがある場所のデザイン」を作るツールであり、「グラフそのもの」を作るツールではないということだ。

グラフ・チャートの生成精度

各グラフタイプの生成精度を試した結果をまとめる。

折れ線グラフ(ラインチャート):レイアウト上の位置・サイズ・軸ラベルの配置は自然に出力される。線の形状は模擬的だが、見た目のデザインとしてはそれらしい。

棒グラフ(バーチャート):横並び・縦並びのどちらも指定できる。棒の高さは模擬値だが、配色・ラベル・余白のバランスはデザインとして成立している。

円グラフ・ドーナツチャート:円の分割比率は固定値で生成されるが、凡例の配置やカラーリングはプロンプトで指定できる。

ヒートマップ・散布図などの複雑なグラフ:基本的なレイアウトは生成できるが、精度が下がる傾向がある。複雑な可視化グラフはStitchよりも専用のデータビジュアライゼーションライブラリを使う設計の方が現実的だ。

ダッシュボードUI設計でStitchが得意なこと

KPIカードのデザイン

ダッシュボードの上部によく配置されるKPIカード(数値・ラベル・増減インジケーターを含むカード)は、Stitchが最も得意とする要素のひとつだ。「4つのKPIカードを横並びに、それぞれに数値・ラベル・前月比の矢印アイコンを含める」という指示で、整ったデザインが生成される。

配色・アイコン種別・増加(緑)/減少(赤)の色分けも指定できるため、ブランドガイドラインに合わせたKPIカードのデザインたたき台をすぐに作れる。

レイアウト構造の素早い比較

「グリッドレイアウト版」「カード中心版」「リスト優先版」など、複数のダッシュボードレイアウトパターンをStitchで素早く生成して比較することは非常に有効だ。Stitch 2.0のマルチスクリーンキャンバスを使えば、最大5パターンのレイアウト案を同一セッションで並べて比較できる。

ゼロからFigmaで複数パターンを作るには数時間かかる作業が、Stitch では30〜60分で複数の方向性を揃えられる。この速度の差は、プロジェクト初期の意思決定に大きく影響する。

Stitch の限界を補う実践的なアプローチ

Stitch でダッシュボードのレイアウトとデザインの方向性を決めた後、実装フェーズでのギャップを埋める方法を整理する。

グラフライブラリとの組み合わせ

Stitch で設計したレイアウトをエンジニアに渡し、グラフ部分はChartJS・Recharts・D3.jsなどの専用ライブラリで実装してもらうという分担が現実的だ。「Stitchのデザインを参考に、このエリアにChartJSの折れ線グラフを実装する」という指示ができれば、設計と実装のつなぎ合わせがスムーズになる。

DESIGN.md にグラフの配色ルールを定義しておくと(例:「グラフのプライマリカラーは#1A73E8、グリッドラインは#E0E0E0」)、Stitch のデザインとライブラリのグラフの見た目を揃えやすくなる。

プレースホルダー思考で設計する

ダッシュボードを設計する際、「実データが入ったらどう見えるか」ではなく「このエリアにこのサイズのグラフが入ったらどう見えるか」という思考でStitchを使うと効果的だ。グラフをプレースホルダーとして扱い、レイアウト・余白・色・タイポグラフィを先に固める。その後、実際のグラフを「差し込む」という順序で進める。

よくある質問(FAQ)

Q1. リアルタイムデータが流れるダッシュボードをStitchで作れますか?

リアルタイムデータの表示はStitch単体では不可能です。Stitchが生成するのは静的なデザインであり、WebSocketやAPIと連動して動くダッシュボードは実装フェーズでエンジニアが別途構築します。Stitch の役割は「こういう画面にしたい」というデザイン方針を決めるところまでです。

Q2. テーブル(表形式)のデータ表示UIはStitchで作れますか?

作れます。ただしStitchの出力ルールとして、テーブルセル(tdタグ・thタグ)は推奨されません。代わりに「リスト形式でデータ一覧を表示」というアプローチで、視覚的にテーブルに近いレイアウトを箇条書きやカード形式で再現することが現実的です。実装時にエンジニアがテーブル構造に変換するのが標準的なフローです。

Q3. ダッシュボードのダークモードはStitchで作れますか?

作れます。プロンプトに「ダークモード・背景は#1A1A2E・テキストは白・グラフ配色はコントラスト高め」と指定することで、ダークモード版のダッシュボードが生成されます。ライトモードとダークモードの両方をStitch 2.0のマルチスクリーンで並べて比較検討することも可能です。

Q4. モバイル向けダッシュボードUIにも対応していますか?

対応しています。「スマートフォン用(375px幅)・縦スクロール・KPIカードは縦1列・グラフは全幅表示」と指定するとモバイル向けダッシュボードが生成されます。デスクトップ版とモバイル版を両方作り、レスポンシブ設計の方向性を決める用途でStitchは有効です。

Q5. ダッシュボードの「空の状態」(データがない初期画面)もStitchで設計すべきですか?

ぜひ設計することをおすすめします。データがある状態の画面だけ設計すると、初回ログイン直後の「何も表示されていない」状態でユーザーが迷子になります。「データが0件の初期状態:説明テキスト+最初のデータを追加するCTA」というエンプティステートをStitchで生成し、正常状態と合わせて4状態セットで整備することを推奨します。

注意点・失敗しやすいポイント

1. グラフの「値」を実際のデータと混同しない

Stitch が生成するグラフの数値・高さ・比率はすべて模擬値だ。クライアントへの提示時に「この数字は仮のものです」と必ず説明すること。模擬値がそのままクライアントに「実データ」と誤解されるケースが起きやすい。

2. 複雑すぎるダッシュボードを1プロンプトで生成しようとしない

「10種類のグラフを含む複合ダッシュボード」を1回のプロンプトで生成しようとすると、レイアウトが破綻しやすい。まず上部エリア、次に中央エリア、最後に下部エリアという分割アプローチで、セクションごとに生成してつなぎ合わせる方が精度が高い。

3. グラフ配色のアクセシビリティを確認する

Stitch が自動選択した配色が色覚多様性に対応していない場合がある。複数の色で区別するグラフは、赤・緑の組み合わせを避けるなどのアクセシビリティ配慮が必要だ。生成後に必ずコントラスト比と色覚シミュレーションを確認すること。

まとめ:Stitch はダッシュボード設計の「起点」として使う

Google Stitch はデータダッシュボードの「完成品」を作るツールではなく、「設計の起点」として使うツールだ。レイアウトの方向性を決め、KPIカードや情報の配置をビジュアルで確認し、チームの合意を取るための叩き台を素早く作る。その価値は本物だ。

グラフの動的な実装はエンジニアの手に委ねる。Stitch が担うのは「どこに何のグラフを置くか」という空間設計と、「どういうデザインの方向性にするか」という意思決定の加速だ。この役割分担を最初から明確にして使えば、Stitch はダッシュボード設計の強力なパートナーになる。

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