ユーザビリティとアクセシビリティの違いとは？〜それぞれの役割と重要性〜

2025.02.05

現代のデジタル環境において、ウェブサイトやアプリの設計は単なるデザインの美しさだけではなく「使いやすさ」と「誰もが利用できること」が求められます。その際に重要な概念が「ユーザビリティ（Usability）」と「アクセシビリティ（Accessibility）」です。
しかし、これらの言葉はしばしば混同されがちです。どちらも「快適に利用できること」に関係していますが、対象とする範囲や目的は異なります。本記事では、ユーザビリティとアクセシビリティの違い、それぞれの役割、そしてデジタルプロダクトにおける実践方法について詳しく解説します。

ユーザビリティとは？

ユーザビリティの定義

ユーザビリティとはシステムや製品、サービスが「どれだけ簡単に、直感的に、効果的に使えるか」を示す概念です。ISO 9241-11（国際標準化機構）では、ユーザビリティを以下のように定義しています。

「特定の利用状況において、特定のユーザーが、特定の目標を達成するために、どれだけ有効・効率的・満足に利用できるか。」

つまりユーザビリティとは「使いやすさ」と「ユーザー満足度」を向上させるための指標なのです。

ユーザビリティの主な要素

ユーザビリティは以下の5つの要素から構成されます。

学習しやすさ（Learnability）

初めて使う人が、どれだけ簡単に操作を学べるか。
例：直感的なナビゲーションがあるウェブサイト。

効率性（Efficiency）

一度学習すれば、どれだけ素早く作業をこなせるか。
例：ショートカットキーが用意されているアプリ。

記憶しやすさ（Memorability）

しばらく使わなくても、再び利用する際に操作を思い出せるか。
例：一貫性のあるデザインやアイコンの配置。

エラー発生率と回復力（Errors）

ユーザーがミスをした際、どれだけ簡単に修正できるか。
例：間違って削除しても復元できる機能。

満足度（Satisfaction）

ユーザーがどれだけ快適に利用できるか。
例：スムーズな操作感、視認性の高いデザイン。

ユーザビリティの重要性

ユーザビリティが高いとユーザーはストレスなく目的を達成でき、満足度が向上します。特にビジネスサイトやECサイトでは、ユーザビリティの改善が売上やコンバージョン率に直結します。

アクセシビリティとは？

アクセシビリティの定義

アクセシビリティとは「障害の有無にかかわらず、すべての人が利用できるようにすること」を意味します。
Webアクセシビリティの基準としては、WCAG（Web Content Accessibility Guidelines）という国際的なガイドラインが広く採用されています。

アクセシビリティの主な要素

アクセシビリティには以下の4つの原則があります。

知覚可能（Perceivable）

すべてのユーザーが情報を知覚できるようにする。
例：画像には代替テキスト（alt属性）を設定。

操作可能（Operable）

すべてのユーザーが操作できるようにする。
例：キーボードのみで操作できるようにする。

理解可能（Understandable）

情報がわかりやすく、予測しやすい設計にする。
例：エラーメッセージを明確に表示。

堅牢（Robust）

さまざまな環境（デバイス、支援技術）で問題なく動作する。
例：スクリーンリーダー対応。

アクセシビリティの重要性

アクセシビリティは高齢者や障害者だけでなく、環境によって一時的に制約を受けるすべてのユーザーに恩恵をもたらします。
例えば明るい日差しの下でスマートフォンを使う際のコントラストの調整や、一時的なケガでマウスを使えないときのキーボード操作など、多くの人に役立つ設計が求められます。

ユーザビリティとアクセシビリティの違い

主な違い

項目	ユーザビリティ	アクセシビリティ
目的	使いやすさの向上	すべての人が利用可能にする
対象	一般的なユーザー	障害者・高齢者・環境制約のある人を含むすべてのユーザー
基準	効率性・満足度	WCAG（国際ガイドライン）
具体例	ナビゲーションの簡素化、検索機能の向上	キーボード操作対応、音声読み上げサポート