「これ、本当にAIが作ったんですか?」
それが最初の一言だった。驚きなのか疑念なのか、最初は判断できなかった。
Google Stitch で作ったUIのラフをクライアントに見せたのは、ある新サービスの画面設計MTGだった。「たたき台」として持っていったものが、想定外の反応を生んだ——その記録をここに書く。
「見せ方」を変えた理由
以前は、クライアントとの初回画面設計MTGには「言葉とワイヤーフレーム」で臨んでいた。「こういう構成を考えています」という説明と、簡単な図。
これが「なかなか伝わらない」という問題があった。言葉と簡単な図だけでは、クライアントの頭の中にある「具体的なイメージ」と私の意図がかみ合わないことが多かった。認識のズレを修正するために、MTGが何度も必要になる。
Google Stitch を使い始めてから、初回MTGにビジュアルのラフを持っていくようにした。「AIで生成したたたき台です」という前置きで見せると、議論がすぐに「具体」に入れるようになった。
最初の一言の続き
「これ、本当にAIが作ったんですか?」という問いの後、クライアントは続けた。
「正直、もっとぎこちないものを想像してました。このまま進めてもいいくらい」
これは期待以上の反応だった。「たたき台として議論の材料にしてもらえれば」と思っていたものが、「これをベースに詰めていきましょう」という流れになった。
ただし、全員が同じ反応をするわけではない。別のクライアントでは「AIが作ったものより、きちんとデザイナーが考えたものを見たい」という反応もあった。クライアントの性格やサービスの性格によって、AI生成物の受け取られ方は変わる。
「AIが作った」と言うべきか、言わないべきか
これは実務的に悩んだ問いだ。
私の現在のスタンスは「言う」だ。理由は二つある。一つは、後から「実はAIで生成したものだった」とわかったとき、信頼を損なうリスクがあること。もう一つは、「AIで生成したたたき台」という前提で見てもらうことで、「これはどこを変えたいか」という建設的な議論に入りやすくなること。
「AIが作ったから品質が低い」という誤解さえなければ、開示することはプラスに働くことの方が多かった。
クライアントワークで使う際の注意点
実際にクライアント案件で使ってみて見えてきた注意点をまとめておく。
- 「たたき台」「方向性確認用」として位置づける。最終納品物として提示しない
- クライアントのブランドカラー・フォントをプロンプトに明示して生成する
- 業種・サービスの性格に合わせたトーンの指定を省かない
- 生成後に「これはAI生成です」と明示するタイミングと方法を考えておく
- クライアントが「AI生成に抵抗がある」タイプかどうかを事前に察知しておく
「最初に見せるもの」が変わると、何が変わるか
Google Stitch を使い始めてから、クライアントとのMTGの質が変わった。
以前は「どんな画面にしますか?」という抽象的な議論から始まっていた。今は「この画面のどこを変えたいですか?」という具体的な議論から始まる。この差は大きい。具体に早く入れるほど、認識のズレが早く解消され、修正の回数も減る。
「最初に見せるもの」を変えることが、プロジェクト全体の効率を変える——これがクライアントワークに Google Stitch を使い始めてから得た、最大の気づきだった。
よくある質問
Q1. AI生成のラフを見せることで、クライアントからの信頼が下がることはありますか?
「AIに任せっきり」という印象を与えると信頼が下がることがあります。「方向性を考えた上でAIを活用してたたき台を作った」という文脈で提示すれば、むしろ「迅速に動いてくれる」という印象になります。見せ方と説明の仕方が重要です。
Q2. クライアントのブランドカラーやロゴをプロンプトで反映させることはできますか?
カラーコード(#RRGGBB形式)や配色の雰囲気をプロンプトで指定することができます。ロゴ画像そのものをAIに認識させる機能は限定的ですが、「コーポレートカラー:#1A2B3C、落ち着いたトーン」のように指定することで近い雰囲気に寄せることは可能です。
Q3. 「AI生成と知らずに最終納品として受け取った」というトラブルはありましたか?
私の経験ではありませんが、防ぐためにも最初から「AI生成のたたき台です」と明示するフローを標準にしています。納品物の定義をプロジェクト開始前にクライアントと合意しておくことも重要です。
Q4. クライアントが「AIが作ったものは嫌」と言った場合、どう対応しますか?
クライアントの意向を尊重した上で、従来の手作業での制作フローに戻します。無理に使う必要はありません。ただし、「なぜ抵抗があるか」をヒアリングすると、「クオリティへの不安」が理由の場合は実物を見せることで解消できることもあります。
Q5. ラフをMTGに持っていく場合、どのような形式で共有しますか?
ブラウザで表示したHTMLのスクリーンショットをPDFやSlideに貼り込んで共有することが多いです。インタラクティブなHTMLファイルをそのまま渡すこともありますが、クライアントの環境によっては閲覧しにくいケースもあるため、静的な画像が安全です。
Q6. Google Stitch を使うことをクライアントへの提案書に明記しますか?
現時点では「AIツールを活用した効率的な制作フロー」として記載しています。特定のツール名を提案書に記載するかどうかはクライアントとの関係性次第です。重要なのは「どんなツールを使うか」よりも「どんな成果を出すか」という点です。
まとめ
クライアントに Google Stitch のラフを見せた経験から得た気づきをまとめる。
- ビジュアルのたたき台を持っていくことで、MTGが「抽象」から「具体」に早く入れる
- 「AIが作った」と開示することは、適切な説明とともに行えばプラスになる
- クライアントの反応は様々——性格と案件の性格を読んで使い方を判断する
- 最初に見せるものの質が、プロジェクト全体の効率を左右する
「これ、本当にAIが作ったんですか?」という最初の一言が、このツールへの信頼を一段上げてくれた。