「Google Stitch って実際どのくらい使っているんですか?」と聞かれることがある。「毎日使っています」と答えると、「毎日何に使っているんですか?」という次の質問が来る。この質問に答えるために、実際に1週間の使い方を全部記録してみた。
仕事のプロジェクトが複数あり、それぞれで使い方が違う。単純な「UIを作る」だけではなく、もっと日常的な場面でも使っていることが、記録してみて改めて分かった。
結論から言うと
1週間の記録を振り返ると、Google Stitch の使い方は「UIを作る」より「考えをビジュアル化する」場面の方が多かった。完成品を作るためより、アイデアを形にして確認するため・チームと共有するため・選択肢を比較するために使っていた。Stitch は「UIデザインツール」である前に「思考の可視化ツール」として日常に溶け込んでいた。
前提:私の仕事環境と担当プロジェクト
記録した1週間の仕事環境を説明する。私はフリーランスのUIデザイナーで、記録した週は3つのプロジェクトを並行していた。①BtoB SaaSのダッシュボード新機能設計(フェーズ:詳細設計中)、②飲食店向けの予約管理アプリのUIリニューアル(フェーズ:方向性検討中)、③個人で運営するデザインブログのUIリニューアル(フェーズ:着手前)。
各プロジェクトのフェーズが違うため、Stitch の使い方も自然と違っていた。これが「Stitch の使い方は目的によって変わる」ことを一週間で体感できた記録になっている。
月曜日:方向性の発散と選択
月曜の午前は週のタスク整理から始める。その後、②の飲食店予約管理アプリのUIリニューアルに着手した。クライアントからは「全体的に古くなっているので刷新したい、方向性から考えてほしい」という依頼で、まだ何も決まっていないゼロからのスタートだった。
この日の Stitch の使い方:「方向性の発散」。「飲食店向け予約管理アプリのダッシュボード画面を、以下の異なるデザイントーンで3パターン生成する。①モダン・ミニマル、②温かみのある・アナログ感、③機能重視・情報密度高」というプロンプトを書き、3つの方向性案を30分以内に生成した。
この3パターンをもとに、午後のクライアントミーティングで方向性を確認した。クライアントが選んだのは①と②の中間。「ミニマルだけど冷たくない、ちょっと温かみがある」という言葉を引き出せたのは、3パターンを見せることで「どちら寄りか」を言語化できたからだ。
月曜日の Stitch 使用時間・目的・結果
使用時間:約35分。目的:クライアントに見せる方向性案の生成と比較。結果:3パターンの初稿 → クライアントから「①と②の中間」という方向性が引き出せた。このミーティングがなければ、方向性確認に次週もかかっていたと思う。
火曜日:詳細設計の補助として使う
火曜は①BtoB SaaSの新機能設計に集中した。新しいデータ可視化コンポーネント(KPIカードのデザイン)をFigmaで設計していたが、「複数パターンを作って比較したい」という場面が出てきた。
火曜の Stitch 使い方:「コンポーネントのバリエーション生成」。「BtoB SaaSのダッシュボード用KPIカードコンポーネント。数値・前月比・トレンドグラフの3要素を含む。以下の3バリエーション:①数値大きめシンプル、②グラフを前面に出したビジュアル重視、③コンパクトで情報密度高い」というプロンプトで生成し、Figmaの参考として使った。
Figmaで作り込む前に「どの方向性のコンポーネントが最もシステムに合うか」を Stitch で確認することで、Figmaでの詳細設計がスムーズに進んだ。使用時間:約20分。Figmaでの実際の設計時間が3時間、Stitch での事前確認が20分という内訳だった。
水曜日:プレゼン資料用のビジュアル
水曜は社内の定例レビューがあった。①のプロジェクトの進捗をステークホルダーに説明するための資料を準備する日だ。Figmaの途中のデザインをそのまま見せても「イメージが伝わらない」と感じたため、Stitch で「完成に近い見た目のビジュアル」を補助的に作成した。
水曜の Stitch 使い方:「プレゼン用の補助ビジュアル生成」。「プレゼン資料に使う、BtoB SaaSの新機能ダッシュボードのビジュアルイメージ。実際のデザインはまだ詳細設計中だが、完成形のイメージを伝えるためのモック」という用途で、1枚のビジュアルを生成した。
資料に「これはAI生成の参考イメージです、実際のデザインは詳細設計中」と注記を入れて使用。ステークホルダーから「完成したらこんなイメージになるんですね」という確認が得られた。使用時間:約15分。
木曜日:新しいプロジェクトの着手
木曜は③個人ブログのUIリニューアルに初めて着手した。自分のサービスなので「自分がどんなUIにしたいか」から考え始めた。完全にゼロからのスタート。
木曜の Stitch 使い方:「自分のブランドの言語化と初稿生成」。まず「自分のブログが与えたい印象」を箇条書きにした(落ち着き・信頼・読みやすさ・適度な余白)。これをプロンプトに変換して「デザイナーが書くデザインブログ、落ち着いたトーン・充分な余白・読みやすいタイポグラフィ、Mediumのようなリーディング体験を大切にしたトップページ」で生成。
出てきたUIは「方向性として良い」と感じた。修正点はいくつか見えたが、「これを起点に作れる」という確信が持てた。ゼロからFigmaを開くより、この確信を持ってから始める方が作業が速い。使用時間:約40分(ブランドの言語化15分+生成と確認25分)。
金曜日:振り返りと来週の準備
金曜は週の振り返りと来週の準備をする日だ。この日の Stitch は「アイデアメモ」的な使い方だった。②の飲食店アプリで「こんな画面もあった方が良いのでは」と思ったアイデアを、素早く形にして確認した。
金曜の Stitch 使い方:「アイデアメモの可視化」。「飲食店向け予約管理アプリの、スタッフ向けシフト確認画面。来週のクライアントミーティングで提案候補として持っていくためのアイデアスケッチ」という用途で1枚生成した。完成度を求めず、「来週の会話のきっかけになるビジュアル」として使う前提。使用時間:約10分。
1週間を振り返って
1週間の記録を整理すると、Stitch の使い方は5種類に分けられた。
- 方向性の発散(月):複数パターンを生成してクライアントと方向性を確認
- コンポーネント確認(火):Figmaで詳細設計する前の方向性確認
- プレゼン補助(水):ステークホルダーへの説明用ビジュアルの生成
- プロジェクト着手(木):新プロジェクトのブランド言語化と初稿生成
- アイデアメモ(金):来週の会話のきっかけになる軽いスケッチ
1週間の合計使用時間は約120分(2時間)。毎日使っているわりに合計時間は短い。「完成品を作るために長時間使う」というより「考えを形にするために短時間使う」という使い方が習慣化していた。
よくある質問(FAQ)
Q1. 毎日 Stitch を使うと料金はどれくらいかかりますか?
A. 2026年4月時点での詳細な料金体系は公式サイトでご確認ください。私の使い方(週に10〜20回程度の生成)では、現在の無料枠で賄えている日が多いですが、生成量が増える時期は有料プランを検討しています。【要確認:Google Stitch の最新料金プラン】
Q2. 毎日使う習慣をつけるためのコツはありますか?
A. 「使い道を先に決めておくこと」が一番効果的でした。「月曜は方向性検討に使う」「クライアントミーティングの前日は必ず1枚生成する」のように、特定の仕事の流れに Stitch を組み込んでしまうと、自然に使う習慣ができます。
Q3. 1週間で使用時間が合計2時間と短いですが、それで効果がありますか?
A. 十分に効果がありました。2時間で5つのビジュアルを作り、それぞれがクライアントとの合意形成・Figmaでの設計効率化・プレゼンの説得力向上に使われました。「長時間使う」ことより「正しい場面で使う」ことの方が、投資対効果は高いと感じています。
Q4. プロジェクトを複数並行している場合、Stitch のプロンプトはどう管理していますか?
A. Notionにプロジェクト別のプロンプトノートを作っています。各プロジェクトの「ブランドプロンプト(ターゲット・トーン・カラー)」を保存し、毎回ゼロから書かずに済む状態にしています。複数プロジェクトを並行するとプロンプトが混乱するため、プロジェクトごとに分けて管理することを強くすすめます。
Q5. 「アイデアメモ」的な使い方はクライアントに見せますか?
A. 場合によります。「これはアイデアのスケッチです、まだ提案段階の仮イメージです」という前置きをしっかりすれば、クライアントに見せることができます。前置きなしに見せると「これが完成形?」という誤解が生まれるため、用途の説明をセットにすることが重要です。
Q6. Stitch を使わない方が良い日・場面はありますか?
A. 「細部の詳細設計をするとき」はFigmaの方が早いです。コンポーネントの1px単位の調整や、実際のコードとの整合を確認するフェーズは Stitch を開かずにFigmaに直行します。また「すでに方向性が決まっていて、あとは作るだけ」というフェーズも Stitch の出番は少ないです。
まとめ——Stitch は「日常の思考ツール」になった
1週間の記録を振り返って、Google Stitch は「UI制作ツール」から「日常の思考ツール」に変化していることが分かった。考えを形にする・選択肢を並べる・チームと共有する・アイデアをメモする——これらすべての場面で、プロンプトを書くことが「考えることの一部」になっている。
毎日使うからこそ、使い方が精緻になっていく。「この場面はこう使う」という感覚が積み重なって、ツールが仕事に溶け込んでいく。Stitch はそういう「習慣になる力」を持つツールだと、1週間の記録を通じて改めて感じた。