Google Stitch を使う前と後で、UIへの向き合い方がどう変わったか

stitch42

ツールを使い始めた自分と、使い続けた後の自分を比べると、変わったのは「作業の速さ」だけではなかった。UIデザインに対する考え方、仕事の始め方、チームとの関わり方——気づかないうちに、いろんなことが少しずつ変わっていた。

この記事は、Google Stitch を使う前と後で「何がどう変わったか」を正直に振り返ったものだ。良い変化ばかりでなく、失ったものもあるかもしれない。それも含めて書く。

結論から言うと

Google Stitch を使い続けた結果、最も大きく変わったのは「UIを言語で考える習慣」だった。プロンプトを書くたびに「このUIは誰のためか・何のためか・どんな印象を与えるか」を言語化するトレーニングを積んでいた。この習慣は Stitch の外でも機能するようになり、仕様書・提案書・チームとの会話の質が変わった。ツールが変えたのはアウトプットの速度だけでなく、インプットの思考プロセスだった。

Stitch を使う前の「UIへの向き合い方」

Stitch を使い始める前、私のUIデザインへの向き合い方を振り返ると、いくつかの癖があった。

一番大きかったのは「手を動かしながら考える」スタイルだった。Figmaを開いて、とりあえずコンポーネントを置いてみる。レイアウトを試しながら、方向性を決めていく。言語化より先に視覚化する流れが自然だった。

これ自体は悪いことではない。でも「なぜこのレイアウトにしたのか」を後から言葉にしようとすると、うまく説明できないことがよくあった。感覚で決めたことを論理に変換する作業が、常に後追いだった。

「白紙への恐れ」があった

Stitch を使う前、白紙のFigmaファイルを開くたびに「最初の一手が難しい」という感覚があった。何から始めるか。どのコンポーネントを最初に置くか。この最初の決断が、思った以上に精神的なエネルギーを使っていた。

特に締め切りが近いとき、この「白紙恐怖」が作業の遅れにつながることがあった。始めるまでの時間が長く、始めてからはスムーズに動けるのに、最初の一歩を踏み出すまでのコストが高かった。

「一人で完結する」習慣

Stitch を使う前は、UIの初稿を「一人で作ってから見せる」スタイルだった。ある程度形になるまで、チームに見せることをためらっていた。「まだ途中だから」という意識が強く、早い段階で外部からのフィードバックを求めることが少なかった。

Stitch を使い始めてから変わった3つのこと

Stitch を日常的に使うようになって、気づいたら変わっていた習慣がある。意図して変えようとしたわけではなく、Stitch の使い方を通じて自然に変化したものだ。

変化1:設計の前に「言語化」するようになった

Stitch はプロンプトを書かないと始まらない。この「書く前工程」が習慣になったことで、Figmaに向かう前にも「何を作るか」を言葉にしてからスタートするようになった。

具体的には、新しい画面を設計する前に「この画面の目的・ユーザー・優先情報・避けること」を箇条書きにする時間を設けるようになった。これがあることで、Figmaでの作業が迷いなく進むようになった。白紙恐怖が消えたのは、この「書く前工程」のおかげだと思っている。

この変化は Stitch 以外の場面にも波及した。仕様書を書くとき・企画提案をするとき・チームへのデザインレビューを依頼するとき——言葉で整理してから動く習慣が、全般的に強化された。

変化2:「早い段階で見せる」ようになった

Stitch で素早くたたき台ができるようになったことで、「完成前に見せる」ことへの心理的ハードルが下がった。Stitch の出力は「明らかにたたき台」という見た目なので、「まだ途中です」という言い訳なしに共有できる。

この変化は、チームとの関係を変えた。以前は「完成形を見せて評価を受ける」スタイルだったが、今は「方向性のたたき台を見せて一緒に考える」スタイルになった。デザインレビューの性質が「評価」から「対話」に変わった感覚がある。

変化3:「選ぶ」仕事が増えた

Stitch でUIを複数パターン生成できるようになって、「ゼロから作る仕事」より「複数候補から選ぶ仕事」の比重が増えた。この変化は思った以上に大きかった。

「選ぶ」ためには「評価軸」が必要だ。何を根拠にこのパターンを選ぶか。どの要素が今の目的に最も合っているか。この評価の習慣が鍛えられたことで、UIを「作る力」だけでなく「判断する力」が育った気がする。

デザイナーとして最終的に求められるのは「良いものを作ること」だが、その前提として「良いものを見分けること」がある。Stitch を使い続けることで、後者の力が予想外に鍛えられた。

変わらなかったこと・少し心配なこと

良い変化だけでなく、正直に「少し心配していること」も書く。

「ゼロから作る」時間が減った

Stitch を使うようになってから、「白紙から全部自分で設計する」時間が減った。これは効率化という意味では良いことだが、「ゼロから作る筋肉」が少し鈍ってきた感覚もある。スポーツで言えば、補助ツールを使いすぎると本来の体の使い方が分からなくなる、に似ているかもしれない。

意識的に対処しているのは「Stitch を使わない日を作ること」だ。月に数回、意図的に Stitch を使わずにゼロからFigmaで設計する時間を作っている。「ゼロから作れる」ことと「Stitch を使って速く作れる」ことの両方を維持したい。

「良いと思う感覚」が変わった気がする

Stitch の出力を多く見ていると、「Stitch が生成しやすいスタイル」に目が慣れてくる感覚がある。いわゆる「AIらしいUI」に対して違和感を感じにくくなっているかもしれない。これは感性の劣化なのか、単なる慣れなのか、まだ判断がつかない。

定期的に Stitch を使わない時間を持つことの意味の一つは、「自分の目を較正する」ことにもある。AIが作ったものとそうでないものを見分ける眼を保つことが、AIツールを使うデザイナーとして大切なことだと思っている。

UIへの「向き合い方」として今大切にしていること

Stitch を使う前と後の変化を振り返って、今の自分が UIデザインへの向き合い方として大切にしていることを整理する。

  • 「このUIは誰のためか」を毎回言葉で確認してから始める——Stitch のおかげで身についた習慣を、Stitch 以外の仕事にも適用する
  • たたき台を早く作り、早く見せる——完成を待たず、方向性の確認を早い段階でする
  • 選ぶときに理由を言語化する——「なんとなく良い」で終わらず、「どこが良いからこれを選ぶ」まで考える
  • 時々ゼロから作る——Stitch に頼り切らず、自分の手だけで設計する時間を意識的に持つ

よくある質問(FAQ)

Q1. Google Stitch を使い続けると、デザイン力は落ちますか?

A. 意識的に使わなければ、落ちる可能性はあると思います。ただし「Stitch を使いながらデザイン力を維持する」ことは可能です。Stitch の出力を見て「なぜこのレイアウトか」を毎回考える習慣、定期的にゼロから設計する時間を持つこと——この2つを実践することで、ツールへの依存と自分の成長を両立できます。

Q2. Stitch を使い始めてから「早く見せる」習慣になったとのことですが、クライアントへの共有はどうしていますか?

A. クライアントへの共有は「これはAIが生成した参考イメージです、方向性の確認のために作りました」という前置きを必ずつけています。Stitch の出力を「デザイン案」として渡すのではなく「方向性のたたき台」として見せることで、完成前の段階での共有が自然に受け入れられています。

Q3. 「ゼロから作る」練習をするためのモチベーションをどう保っていますか?

A. 意図的に「趣味のデザイン」の時間を作っています。仕事のプレッシャーなしに、自分が好きなテーマ(架空のサービスのUIなど)をゼロから作る時間です。これが Stitch に頼らない筋肉の維持になっています。

Q4. チームへの「早い段階で見せる」文化はどうやって作りましたか?

A. まず自分から「これはたたき台です、早めに見てほしい」と伝えて見せ続けることで、チームが慣れてくれました。最初は「こんな早い段階で?」と驚かれましたが、方向性の確認が速くなる実感を共有することで、チームの文化として定着しました。

Q5. Stitch を使い始めて「失った」と感じることはありますか?

A. 「悩む時間」が減ったことは、ある意味で失ったものかもしれません。白紙を前に「どうしようか」と考える時間は、一見非効率ですが、その中で本質的なアイデアが生まれることもありました。Stitch で素早く初稿を作れるようになったことで、この「もやもや考える時間」が短くなった。これが良いことか悪いことかは、まだ分かりません。

Q6. Stitch を使う前の自分に一つアドバイスするとしたら何ですか?

A. 「ツールの使い方より、何のために使うかを先に決めること」です。Stitch の使い方を覚えることに集中しすぎて、「自分の仕事のどこで使うか」を考えるのが後になりました。目的と使い場所を先に決めてから触り始めていたら、習熟がもっと速かったと思います。

まとめ

Google Stitch を使う前と後で変わったのは、UIの作り方だけではなかった。言語化する習慣、早い段階で見せる勇気、選ぶ力——これらはStitchを使い続けることで、気づかないうちに育っていた。

ツールは使い方次第で、自分を変える力を持つ。Stitch はUIを速く作るツールであると同時に、UIについて考える習慣を作るツールでもあった。この二面性に気づいたとき、このツールとの付き合い方が少し豊かになった気がする。

最新記事
  • カテゴリー
  • 月別
  • Twitter

    ココナラでデザインを依頼する

    7000本の授業が見放題!社会人向けオンライン学習動画【Schoo(スクー)】

    Webデザイン業界特化のレバテック

    定額制で質問し放題【Web食いオンラインスクール】

    関連記事

    最新記事NEW

    CONTACTCONTACT CONTACTCONTACT

    お問い合わせ

    ご意見やお仕事のご依頼などは以下よりご連絡ください。

    情報入力

    内容確認

    完了

      お名前必須

      フリガナ必須

      メールアドレス必須

      お問い合わせ内容