Google Stitch を使い続けて、「良いUIとは何か」という問いへの向き合い方が変わった

「良いUIとは何か」——この問いは、デザインに関わる人なら誰もが一度は向き合う問いだと思う。

Stitch を使い始める前、私にとっての「良いUI」の答えは「きれいで、シンプルで、ユーザーが迷わないもの」だった。それは間違っていないが、今思えばかなり表面的な答えだった。

Stitch でプロンプトを書き続け、何百枚もの画面を生成・比較・修正してきた今、この問いへの向き合い方が変わった。「良いUI」を単なるビジュアルの話として考えることが少なくなり、「誰のための、どんな文脈での、何を達成するためのUI か」という問いが先に来るようになった。

この記事は、Stitch を通じて「良いUIとは何か」という問いへの答えがどう変化したかを書く。正直に言うと、答えは出ていない。でも問いの立て方は確実に変わった。

結論から言うと、Google Stitch を使い続けることで「良いUIとは何か」という問いが「ビジュアルの評価」から「体験の設計」へと移動した。きれいかどうかではなく、「このUIでユーザーは何を感じ、どう動くか」という問いが先に来るようになった変化は、ツールを使い続けた時間が与えてくれた視点だ。

Stitch を使い始めた頃の「良いUI」の定義

Google Stitch(以下、Stitch)とは、テキストや音声のプロンプトをもとにAIがUIデザインを自動生成するGoogleのデザインツールです。stitch.withgoogle.comで無料で利用でき、数秒でUIが生成される。

Stitch を使い始めた頃、私は生成されたUIを「きれいかどうか」で評価していた。整ったレイアウト・統一されたカラーパレット・適切な余白——そういったビジュアルの品質を「良いUI」の基準にしていた。

その評価軸でプロンプトを修正し続けると、確かに「きれいなUI」は作れるようになる。しかしあるとき、「きれいだが使いにくい画面」を作っていることに気づいた。情報の優先順位が間違っていて、最も重要なボタンが視覚的に目立たない位置にある。レイアウトは整っているのに、ユーザーが次に何をすればいいかわからない——そういったUIを「きれいだからOK」と評価していた時期があった。

「きれい」と「良い」は違う

Stitch で何百枚もの画面を生成するうちに、「きれいなUI」と「良いUI」が必ずしも一致しないことが体感としてわかってきた。

きれいなUIは「見た瞬間の印象が良い」ものだ。整ったグリッド、統一された色味、適切な余白——視覚的な美しさの話だ。

良いUIは「使ったときに、達成したいことが達成できる」ものだ。見た目が多少雑でも、ユーザーが迷わず目的を達成できるUIは「良いUI」だ。逆に、見た目がどれだけきれいでも、ユーザーが何をすればいいか迷うUIは「良いUI」とは言えない。

Stitch での生成・修正を繰り返す中で、私の評価軸は「見た目の美しさ」から「目的の達成しやすさ」へと移っていった。この変化は、ツールへの慣れが与えた思考の深化だった。

「良いUI」の問いが深くなった3つの転換点

転換点1:「誰にとって良いか」を考えるようになった

最初の転換点は「良いUIは誰にとって良いのか」という問いが生まれたときだ。

Stitch で「シニア向けの医療予約アプリ」と「20代向けのフィットネスアプリ」のUIを連続して設計したとき、同じ「シンプルで使いやすい」という基準が、全く異なる設計を生むことに気づいた。シニア向けには大きなフォント・広いタップ領域・少ない操作ステップが「使いやすい」。20代向けには密度の高い情報・スワイプ操作・ショートカット機能が「使いやすい」。

「良いUI」の基準は普遍的ではない。「誰のための」という文脈によって、良さの定義が変わる——この気づきが最初の転換点だった。

転換点2:「文脈」が設計を決めると気づいた

二つ目の転換点は「同じ機能でも、使われる文脈によって最適な設計が変わる」という気づきだ。

Stitch で「検索ボタンの設計」を異なるサービス文脈で何度も試した。ECサービスでの検索は「今すぐ商品を見つけたい」という能動的な行動だ。一方、ニュースアプリでの検索は「気になった情報をあとで調べよう」という受動的な行動に近い。同じ「検索」機能でも、文脈が違えば最適な配置・サイズ・プレースホルダーテキストが変わる。

「この機能をどう設計するか」ではなく「この機能は誰が、どんな状況で、何のために使うのか」——文脈を問わない設計は、機能的には正しくても、体験として正しくならないことを、Stitch での試行錯誤から学んだ。

転換点3:「見えないUI」が最高だと気づいた

三つ目の転換点は、ある記事を読んだことがきっかけだった。「最高のUIはUIが存在しないことに気づかせないものだ」という考え方だ。

Stitch で何百枚もの画面を生成してきた経験で、この考えが腑に落ちた。ユーザーが「このボタンどこだっけ」と探さない画面、「次に何すればいいんだっけ」と迷わない画面、「あれ、どうやって戻るんだろう」と困らない画面——これらは「UIが透明になっている」状態だ。

ユーザーがUIのことを意識せず、ただ「やりたいことをやっている」状態。その状態を作ることが「良いUI」の本質ではないか——Stitch を使い続けた時間が、この考えへの確信を強めた。

Stitch が「問いの立て方」を変えた理由

なぜ Stitch を使うことで「良いUIとは何か」という問いへの向き合い方が変わったのか。振り返ると、理由は二つある。

一つ目は「量をこなしたこと」だ。Stitch は生成が速いため、短期間で多数のUIを生成・比較できる。その過程で「きれいなのに使えないUI」と「素朴だが機能するUI」を何度も比較する経験が積み重なった。量をこなすことで、「きれいかどうか」という表面的な評価軸の限界が体感として見えてきた。

二つ目は「プロンプトを書くことが思考の訓練になったこと」だ。Stitch のプロンプトを書くとき、「誰のための、どんな状況での、何を達成するためのUI か」を言語化しなければならない。この繰り返しが、UIを評価するときの思考パターンにも影響した。「なぜこのUIが良いのか(あるいは悪いのか)」を言語化する習慣が、問いの立て方を深化させた。

今も答えが出ていないこと

Stitch を使い続けて「良いUIとは何か」という問いへの向き合い方は変わった。でも「答え」は出ていない。

一つの画面が「良いUI」かどうかは、「誰にとって」「どんな文脈で」「何を達成しようとして」という条件によって変わる。普遍的な「良いUI」の定義は存在しないかもしれない。

それでも Stitch を使い続けることには意味がある。プロンプトを書いて、UIを生成して、「これで合っているか」を問い続けるプロセス自体が、「良いUIとは何か」への理解を深めているからだ。答えのない問いを問い続けることが、設計の思考を磨く。

失敗したこと・気をつけるべきこと

1. 「きれいなUI」を「良いUI」と混同していた時期が長かった

Stitch で生成したUIをビジュアルの美しさだけで評価していた時期が相当長かった。「整っている=良い」という評価軸を持ち続けた結果、使いにくい画面を「完成」と判断した経験がある。評価軸を「見た目の品質」から「目的の達成しやすさ」に変えるだけで、設計の判断の質が大きく変わった。

2. 「ユーザーを想像する」ことをプロンプトの外に置いていた

Stitch を使い始めた頃、「どんな画面を作るか」に集中しすぎて「誰が使うか」をプロンプトに入れていなかった時期がある。ユーザーの文脈をプロンプトに含めると、生成されるUIの「体験の温度感」が変わることに気づいてから、ユーザー記述は必ずプロンプトの最初に書くようにした。

3. 理論で「良いUI」を定義しようとして、感覚を失った時期があった

UIの書籍を読み込んで「良いUIの原則」を言語化しようとした時期に、「感じる力」が弱くなった経験がある。「この画面はヒックの法則に反している」という分析が先に来て、「なんか使いにくい」という直感的な評価が後回しになった。理論と感覚はどちらか一方ではなく、両方を持ち合わせることが重要だった。

4. 「良いUI」の定義を一般化しすぎた

自分の中で「良いUI」の定義が固まってきた時期に、それを全てのプロジェクトに適用しようとして失敗した。医療アプリに「若者向けフィットネスアプリの設計感覚」を持ち込んだ結果、「信頼感がない」「軽すぎる」という評価を受けた。「良いUI」の基準はプロジェクトの文脈に合わせて都度設定し直す必要がある。

5. 問いを持ち続けることを「効率が悪い」と思っていた時期があった

「良いUIとは何か」と問い続けることを「答えが出ない非効率な思考」と感じていた時期がある。しかし問いを持ち続けることこそが、設計の思考を深める原動力だと気づいた。答えが出なくても、問いが深まることで見えてくるものがある。「問いを持ち続けること」は非効率ではなく、設計者としての成長の核だった。

よくある質問(FAQ)

Q1. 良いUIの定義はありますか?

普遍的な定義はありませんが、最も広く使われる基準は「ユーザーが目的を達成できること」です。Don Norman の「The Design of Everyday Things」では「発見可能性(Discoverability)」と「フィードバック」が重要な要素として挙げられています。ただしこれらは「文脈」によって実装の形が変わります。「誰のための、どんな状況での、何を達成するためのUI か」という問いが、良いUIを定義する出発点です。

Q2. きれいなUIと良いUIはどう違いますか?

きれいなUIは「見た瞬間の印象が良い」もの、良いUIは「使ったときに目的が達成できる」ものです。両立することが理想ですが、トレードオフが生じるときは「目的の達成しやすさ」を優先すべきです。視覚的な美しさはUXの補助であり、目的ではありません。

Q3. Google Stitch を使うことで、UIへの理解は深まりますか?

深まります。ただし「ただ生成する」だけでは深まりにくいです。「なぜこのUIが意図と違うか言語化する」「良い画面と悪い画面の差分を分析する」という使い方をすることで、UIへの理解が加速します。Stitch は「大量の実験ができる環境」であり、実験から学ぶ習慣があれば理解の深化に直結します。

Q4. ユーザーの文脈をどうプロンプトに組み込めばいいですか?

「誰が(ユーザー属性)」「どんな状況で(使用シーン)」「何のために(目標)」の3点をセットで書くと効果的です。例:「40代の中小企業経営者が、移動中のスマートフォンで売上を確認するダッシュボード。数値は大きく・シンプルに・3秒で状況が把握できる設計」のように記述すると、ユーザーの文脈がUIの方向性を決めていきます。

Q5. 「見えないUI」とはどういう意味ですか?

「ユーザーがUIの存在を意識せず、やりたいことだけに集中できる状態」を指します。ナビゲーションを探す必要がない、次の操作に迷わない、エラーが起きても何をすればいいかすぐわかる——これらが実現されているとき、UIは「透明になっている」状態です。この状態が「最高のUI」の一つの理想形です。

Q6. UIの良し悪しを感覚ではなく論理で評価する方法はありますか?

「ヒューリスティック評価」が最も実用的です。Jakob Nielsen の10ヒューリスティクス(システムの状態の可視性・実世界との一致・ユーザーコントロールと自由度など)を基準に評価することで、感覚的な評価に論理的な根拠を加えられます。ただし論理と感覚は競合するものではなく、感覚的な「違和感」を論理で言語化するツールとして使うのが最も効果的です。

Q7. UIデザインの勉強に Stitch は使えますか?

使えます。特に「大量のUIを短時間で試せる」という特性が学習に向いています。学習効果を高めるには「生成したUIを評価する習慣」を持つことが重要です。「なぜこのUIは良いのか・悪いのか」「どう直せばより良くなるか」を毎回言語化することで、UIデザインの思考が実践的に磨かれます。

Q8. 「良いUIとは何か」という問いに向き合い続けることに意味はありますか?

あります。答えのない問いを問い続けることで、設計の判断基準が精緻になっていきます。「良いUI」の定義は文脈によって変わるため、普遍的な答えはありませんが、問い続けることで「この文脈では何が良いUI か」という個別の判断力が積み重なります。問いを持ち続けることが、設計者としての成長の核です。

まとめ

Google Stitch を使い続けて、「良いUIとは何か」という問いへの向き合い方が変わった——その変化を一言で言うなら、「ビジュアルの評価から体験の設計へ」の移動だ。

Stitch を使う前は「きれいで、シンプルで、迷わないUI」が良いUIだと思っていた。Stitch を使い続けた今は「誰のための、どんな文脈での、何を達成するためのUI か」という問いが先に来るようになった。

  • 「きれいなUI」と「良いUI」は必ずしも一致しない——目的達成を優先する
  • 「良いUI」は「誰にとって」「どんな文脈で」によって定義が変わる
  • 最高のUIは「UIの存在を意識させない」透明な状態を目指す
  • 量をこなすことで「表面的な評価軸の限界」が体感として見えてくる
  • 答えのない問いを問い続けることが、設計の思考を深める

Stitch はUIを生成するツールだが、使い続けることで「良いUIとは何か」を問い続ける環境を与えてくれる。答えが出なくても、問いが深まることで設計の判断は確実に良くなっていく。それが Stitch を使い続ける理由の一つだ。

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