Gemini を使い始めた最初の頃、毎回チャットを開くたびに同じ説明を繰り返していた。「私はブログを運営していて、SEOを意識した記事を書いています。読者は30代の会社員で、AIツールに興味があります」といった前置きを、チャットのたびに入力していた。これが地味に面倒で、Gemini を活用しきれていない原因の一つになっていた。
Gems 機能を使い始めてから、この悩みが解消された。毎回の「前置き」が不要になり、Gemini に話しかける感覚が変わった。この記事では、Gems とは何か、実際にどう使っているか、使ってみてわかったことを整理して書く。Gemini を使っていて「毎回説明するのが面倒」と感じている人に、特に読んでほしい。
Gems とは、Gemini Advanced(Google One AI プレミアムプランに含まれる機能)で利用できる、自分専用のカスタム AI アシスタントを作成する機能だ。2024年に Google が発表し、Gemini の使いやすさを大きく変えた機能の一つとして注目されている。
Gems とは何か。自分専用の AI アシスタントを作れる機能
Gems とは、Gemini に対してあらかじめ「役割」「文体」「使う目的」などを設定した、自分専用のカスタム AI のことだ。一度 Gems を作っておくと、そのチャットを開くたびに設定した内容が反映された状態で会話を始めることができる。毎回ゼロからプロンプトを書く必要がなくなる。
Gems でできること
Gems に設定できる内容は主に「このGemの名前」「このGemの役割・目的」「応答のトーンや形式」などだ。たとえば「SEO記事の執筆アシスタント。ターゲットは30代ビジネスパーソン。常に具体例を含めて、800文字以上で回答すること」という指示を設定しておくと、そのGemを使うたびにその設定で動いてくれる。
Google が公式に提供している Gems もある。「料理アシスタント」「旅行プランナー」「文章コーチ」など、すでに用途に合わせて設定されたGemが使えるようになっている。これらは設定の手間なく使えるため、Gems を試す最初の入口として使いやすい。自分でカスタムGemsを作るのは Gemini Advanced が必要だが、公式 Gems の一部は無料プランでも試せる。
Gems を使うのに必要なもの
自分でカスタム Gems を作成するには、Gemini Advanced(Google One AI プレミアムプラン、月額2,900円)が必要だ。無料プランでは Google が用意した公式 Gems は使えるが、自分でカスタム Gems を作る機能は有料プランに限られている。Gemini Advanced は Gemini 1.5 Pro や 2.0 Flash などの高性能モデルを使えることも含めて、ヘビーユーザーには費用対効果が高い。
Gems とシステムプロンプトの違い
他の AI ツールで「システムプロンプト」と呼ばれているものと概念は近い。違いは、Gems が Gemini のインターフェース上でボタン一つで切り替えられること、複数の Gems を用途別に保存して使い分けられること、設定の変更も UI 上から直感的にできることだ。プロンプトエンジニアリングの知識がなくても、日本語で「こういう使い方をしてほしい」と書けば機能する。
Gems を使う前に感じていた悩み。毎回の「前置き」が面倒だった
Gemini を仕事に使い始めた当初、一番の不満は「チャットを開くたびにゼロスタートになること」だった。前の会話で伝えた自分のコンテキスト(誰で、何のために使っているか)が次のチャットには引き継がれない。毎回同じ説明をするうちに、「また書かないといけない」という心理的なハードルが生まれていた。
毎回のコンテキスト説明が蓄積するストレス
「私はオウンドメディアを運営しているフリーランサーで、主な読者は30〜40代の会社員です。記事はSEOを意識して書いており、キーワードは自然に含める形にしたいです。文体はですます調で、専門用語を避けたわかりやすい表現を使ってください」といった前置きを、毎回チャットの冒頭に入力していた。これが300〜400文字程度あり、毎回書くのが億劫になっていた。
あるいはこのコンテキストをコピーして毎回貼り付けるルーティンを作ったが、それはそれで面倒だった。「前のチャットの続きからできれば」と思うが、Gemini のチャット履歴は参照できても、会話は独立して処理される。ツールとして使いたいのに、使うたびに「同じ説明」をしなければならない状況が続いた。
用途別のコンテキストが混在する問題
仕事用の Gemini 活用が増えると、「ブログ記事用」「メール返信用」「データ分析用」など、用途ごとに違うコンテキストが必要になった。そのたびに設定を切り替えていると、誤った前提で回答が返ってくることもあった。「今日のブログ記事」の話をしているつもりが、前のチャットのデータ分析の文脈で回答されたり。この混乱を解消したくて、Gems を試してみた。
実際に作った Gems の例。3つのカスタム AI を使い分けている
現在、自分が使っている Gems は主に3つだ。それぞれ用途が明確に違い、切り替えることで Gemini への依頼の精度が上がっている。実際に設定した内容の骨格を紹介する。
ブログ執筆アシスタント Gem
設定内容:「あなたはSEOブログの執筆アシスタントです。ターゲット読者は30〜40代の会社員で、AIツールに興味があります。記事の文体はですます調。各セクションは具体例を含め、読者が行動できるレベルまで掘り下げてください。SEOを意識して、見出しには自然にキーワードを含めること」という形で設定している。このGemを使うと、記事の構成を依頼するだけで自分のメディアのトーンに合った提案が返ってくる。
以前は「SEOを意識して…ですます調で…」という前置きを毎回書いていたが、Gem を使い始めてからはそれが不要になった。「Geminiの活用事例についての記事を書きたい。構成案を出して」とだけ言えば、自分のブログに合った提案が返ってくる。1回の依頼が短くなっただけで、Geminiへの相談のハードルが下がった。
会議・議事録アシスタント Gem
設定内容:「会議の準備と議事録作成を専門とするアシスタントです。議事録のフォーマットは(1)決定事項 (2)アクションアイテム(担当者・期限付き)(3)議論の概要、の3セクション構成にしてください。アクションアイテムは必ず『誰が・何を・いつまでに』の形で書くこと」という設定だ。このGemに会議メモを渡すだけで、設定したフォーマットの議事録が返ってくる。
英語チェック Gem
設定内容:「英語のビジネスメール・文書の校正と改善を行うアシスタントです。(1)文法・語法のミスを指摘して修正案を示す (2)より自然なビジネス英語の表現に書き換える (3)日本人が間違えやすいニュアンスの違いを説明する、の3点を必ず含めて回答してください。説明は日本語で行うこと」という形で設定している。英語のテキストを貼り付けるだけで、校正結果と解説が返ってくる。
Gems の作り方。5分でできる手順と、効果的な設定のコツ
Gems の作成は思ったより簡単だ。Gemini の画面左側にある「Gem マネージャー」から「新しい Gem を作成」を選ぶと、設定画面が開く。名前をつけて、「指示」欄に使い方を日本語で書くだけで完成する。技術的な知識は不要だ。
効果的な Gem 設定の書き方
Gem の指示を書くときに意識していることは3つだ。(1)「あなたは〇〇のアシスタントです」という役割の明示、(2)「〇〇の形式で回答してください」という出力フォーマットの指定、(3)「〜は含めないこと」「〜は必ずやること」というルールの明示。この3点を含めると、Gemini の応答がぐっと期待に近くなる。
最初から完璧な設定を目指す必要はない。実際に使ってみて「このパターンが多い」「この回答が期待と違う」と感じたら、指示を追記・修正すればいい。Gem の設定はいつでも編集できるので、使いながら育てていく感覚で作るのが定着しやすい。
Gem を複数作るときのルール
複数の Gems を作ると、「どれを使えばいいか迷う」という状態になりやすい。自分のルールは「1つの Gem には1つの目的だけ持たせる」ことだ。ブログ用とメール用を1つの Gem に詰め込まない。用途が違う場合は別の Gem にする。そうすると、「この作業はこの Gem」というルーティンができて、選ぶ手間がなくなる。目安は「週に1回以上使う用途」に対して Gem を作るくらいが、管理のしやすさと使う頻度のバランスがちょうどいい。月に1〜2回しか使わない用途なら、その都度プロンプトを書く方がシンプルだ。
Gems を使い続けて変わったこと。AI との距離感が変わった
Gems を使い始めて3ヶ月が経つ。最初は「毎回の説明が省ける」という効率化の話だったが、使い続けるうちに別の変化があったことに気づいた。Gems を使うことで、Gemini との会話の「入口」が変わり、それが出力の質にも影響していることがわかってきた。
Gemini への「相談のハードル」が下がった
以前は Gemini を使うとき、「どう伝えれば伝わるか」を考える時間があった。Gem を使い始めてからは、「とりあえず聞いてみよう」という感覚になった。設定の手間がなくなった分、依頼のハードルが下がり、使う頻度が増えた。結果として、Gemini を使いこなすスピードが上がった。「まず聞いてみる」という行動が増えることで、Gemini の能力をより広く引き出せるようになる。ツールへの相談コストが下がることが、AI 活用の質を上げる上で重要なことだと実感している。
「道具」から「パートナー」に近づいた感覚
抽象的な話だが、Gems を使い始めてから Gemini が「道具」ではなく「文脈を共有しているパートナー」に近い感覚になった。同じ前提を持った状態で話せる相手が常にそこにいる、という感覚だ。もちろん Gemini に記憶はなく、チャットをまたぐと情報は引き継がれない。でも、Gem の設定が「共通言語」として機能することで、関係の密度が上がった気がしている。「毎回ゼロから話す相手」と「ある程度前提を共有している相手」では、話の深さが違う。Gems はその「前提の共有」を担ってくれる仕組みだ。
Gems の限界と注意点。過信しないために知っておくこと
Gems は便利だが、いくつか気をつけておくことがある。使い始める前に知っておくと、期待値のズレを防げる。
会話をまたいで記憶は引き継がれない
Gem の設定(役割・フォーマット・ルール)は引き継がれるが、会話の中で話した内容は次のチャットには引き継がれない。「先週話した○○の件」は通じない。Gems はあくまで「前置きの設定を保存する機能」であり、長期的な記憶を持つ機能ではない。この点は割り切って使う必要がある。
設定が多すぎると逆効果になる
Gem の指示が長くなりすぎると、Gemini が全ての指示を守り切れなくなることがある。「〜してください」という指示を10個以上詰め込むと、その一部が無視されることがあった。実際に試したところ、5〜7個の指示に絞った方が安定して動くことがわかった。Gem の指示は「絶対に必要なもの」だけに絞る方が、精度が上がりやすい。「あれもこれも設定したい」という気持ちはわかるが、詰め込みすぎると全体の精度が下がる。最初はシンプルに始めて、「この指示が実際に機能していないな」と感じた部分を削り、「この指示を追加したい」という部分だけを足す、という方向で育てていくのが現実的だ。
Google が用意している公式 Gems の種類と使い方
Gemini には、Google が事前に設定した公式 Gems が用意されている。無料プランでも使えるものがあり、カスタム Gems を作る前の入口として活用しやすい。主要なものを紹介する。
「文章コーチ(Writing editor)」Gem
文章の執筆・改善を支援する Gem だ。「この文章をもっと簡潔にして」「このメールをプロフェッショナルなトーンに変えて」といった依頼に対して、文章の書き方に特化した形で応答してくれる。通常の Gemini に同じ依頼をするより、出力が文章特化の視点で整理される印象がある。ブログや仕事の文書をよく書く人にとって使いやすい Gem だ。
「学習コーチ(Learning coach)」Gem
学習や知識習得を支援する Gem だ。「〇〇について学びたい。初学者向けに教えて」「この概念を理解するために、何から始めるべきか」という依頼に対して、段階的な学習プランを提案してくれる。新しい分野を学び始めるときや、わからないことを効率的にインプットしたいときに向いている。
公式 Gems をカスタム作成の参考にする
公式 Gems を使うと「自分がよく依頼する内容とのズレ」が見えてくる。「公式の文章コーチは全体的なアドバイスを出すが、自分はSEO視点での改善を求めている」という気づきが、自分専用の Gem 設定を作るヒントになる。公式 Gems を試して「ここが足りない」と思った部分を補う形でカスタム Gems を設定するアプローチが効率的だ。公式 Gems を「雛形」として、自分のニーズに合わせて改良するイメージで取り組むと、最初のカスタム Gem 作りへの心理的ハードルが下がる。まず公式 Gems を1週間試して、「ここが惜しい」という不満を見つけることが、自分専用 Gems 作りへの最短ルートだ。
Gems を日常ワークフローに組み込む方法
Gems を作るだけでは意味がない。実際の仕事のルーティンに組み込んで「自然に使う状態」を作ることが大切だ。ツールは使い続けてこそ価値が出る。自分が Gems を定着させるまでにやったことを整理する。
よく使う Gem をブックマークする
Gemini の画面左側の Gem マネージャーから、よく使う Gem をすぐ開けるように整理しておく。「毎朝ブログ執筆 Gem を開く」「会議のたびに議事録 Gem を開く」というルーティンを作ることで、Gems が習慣化される。最初は意識して使う必要があるが、1〜2週間続けると自然に手が動くようになる。
Gem の名前でどの状況で使うかをわかるようにする
Gems の名前は「ブログ記事執筆」「週次議事録」「英語メール校正」のように、「いつ使うか」がわかる名前にしておくのがコツだ。「Gem1」「Gem2」のような名前だと迷うが、状況がわかる名前だと瞬時に選べる。名前と絵文字を組み合わせると(例:「📝 ブログ記事執筆」)、視覚的に識別しやすくなる。
Gems を使い始めた最初の数日は「Gem を使わずに普通に Gemini に聞く」という癖が残りやすい。そのたびに「この作業、Gem を使った方が早かった」と気づいたら、次からは Gem を先に開く。このループを意識的に回すことで、2週間程度でルーティン化できた。
よくある質問
Q1. Gems は無料で使えますか?
Google が公式に提供している Gems(料理・旅行・学習用など)は無料プランでも利用できます。自分でカスタム Gems を作成する機能は Gemini Advanced(月額2,900円のGoogle One AI プレミアムプラン)が必要です。まず公式 Gems を試してみて、カスタム作成が必要と感じたら有料プランへの移行を検討するのがおすすめです。
Q2. Gems はいくつまで作れますか?
Gemini Advanced では複数のカスタム Gems を作成できます。上限については Google の公式ドキュメントを確認してください。実用上、5〜10個程度を用途別に作っておくと管理しやすいです。増やしすぎると「どれを使えばいいか」迷うため、目的が明確なものだけ作るのがおすすめです。
Q3. Gems に個人情報を設定しても大丈夫ですか?
Gem の設定内容はアカウントに保存されます。氏名・住所などの個人情報を詳細に記載することは推奨しません。「ブログ執筆用」「会議アシスタント用」など、役割や出力フォーマットの指定にとどめるのが安全です。業務上の機密情報をGemの設定に書き込むことも避けてください。
Q4. ChatGPT の GPTs と何が違いますか?
概念的には ChatGPT Plus の「GPTs(カスタム GPT)」に近い機能です。大きな違いは、Gemini Gems は Google Workspace(ドライブ・ドキュメント・カレンダーなど)との連携が強みであること、GPTs は外部 API の接続や画像生成との統合が充実していることです。Google のサービスを中心に使っているなら Gems、OpenAI のエコシステムを使っているなら GPTs の方がなじみやすいでしょう。
Q5. スマートフォンからも Gems は使えますか?
Gemini のスマートフォンアプリ(iOS・Android)からも Gems を使うことができます。作成はブラウザ版(PCやスマートフォンのブラウザ)から行う方が入力しやすいですが、作成後の利用はアプリからも可能です。外出先でも同じ設定を維持したまま Gemini を使えるのは、モバイル利用が多い人にとって便利な点です。
Q6. Gems の設定内容はいつでも変更できますか?
はい、いつでも変更できます。Gem マネージャーから作成済みの Gems を選択して「編集」ボタンを押すと、設定内容の変更や削除が可能です。実際に使いながら「この指示は不要だった」「こういう条件を追加したい」と気づくことが多いので、使いながら少しずつ改善していくアプローチが定着しやすいです。
まとめ。Gems は「毎回の説明」をなくす、地味に効く機能
Gemini の Gems は、派手な新機能ではない。でも、毎日 Gemini を使う人にとっては「なくてはならない」と感じるくらい、地味に効く機能だ。毎回の前置きがなくなるだけで、AI への相談のハードルが下がり、使う頻度が増え、結果的に Gemini の活用レベルが上がる。
最初から完璧な Gems を作ろうとしなくていい。「ブログ執筆用」「議事録用」など、一番よく使う用途を一つ決めて、シンプルな指示を設定するだけで始められる。使いながら改善していけばいい。Gem の設定は「育てるもの」という感覚が正しい。最初は3行の設定でもいいし、使ってみてわかった「もっとこうしてほしい」という点を追加していけば、半月で自分にとっての最適な Gem が完成する。
Gemini Advanced を使っているなら、まず1つ Gem を作ってみてほしい。「毎回説明しなくていい」という体験は、Gemini との向き合い方を少し変えてくれる。そしてその小さな変化が、日々の仕事の中で積み重なっていく。Gems は「Gemini を使いこなすための最初の一歩」とも言える機能で、使い始めてみると「なぜ今まで使っていなかったのか」と感じるはずだ。
Gems をまだ使ったことがない人は、まず Google が用意している公式 Gems から試してみるのがおすすめだ。設定不要で、自分のニーズに合った Gems を選んで使うだけでいい。そこから「自分でカスタムしたい」と思ったら、有料プランを検討してみてほしい。Gemini を使う頻度が高い人ほど、Gems の恩恵は大きい。毎回の「準備」をなくすことで、Gemini への質問の質が変わる。それが積み重なると、仕事の仕方が変わる。Gems は、その変化への入口だ。一度使い始めると、Gems のない状態には戻れなくなる。それだけ日常に溶け込む機能だ。