Google Stitch で作ったUIをA/Bテストした記録——どちらが選ばれたか

「AIが良いと思ったUIが、ユーザーにも良いと思われるとは限らない」——そう感じるようになったきっかけは、Google Stitch で作った2パターンのUIを実際にA/Bテストしたことだった。

Stitch が出してくれるUIは見た目が良い。デザイナーが作ったものと遜色ないことも多い。でも「見た目が良い」と「ユーザーが使いやすい」は、必ずしも一致しない。この記事では、Stitch で作った複数パターンのUIを実際にユーザーに試してもらい、どちらが選ばれたかを記録する。

結論から言うと

3回のA/Bテストを通じて、「Stitch が出したデザイン的に洗練されたUI」より「シンプルで情報量を絞ったUI」の方がユーザーに支持されるケースが多かった。特に初めて使うユーザーほど「情報が少ないUI」を好み、慣れたユーザーほど「機能が充実したUI」を好む傾向が見えた。Stitch の出力は「デザイナーが良いと思うUI」に最適化されていることが多く、「初めてのユーザーが迷わないUI」とは異なることがある。

A/Bテストの概要

今回実施したA/Bテストは3件だ。いずれも同じ画面について、Stitch で2パターンのUIを生成し、プロトタイプツール(Figma Prototype)でインタラクティブなモックを作り、ユーザーに実際に操作してもらって評価を得た。

テスト参加者はサービスの想定ユーザーに近い20人(各テストで異なる人物)。評価は「使いやすいと感じる方を選んでください」という単純な選択と、その後の簡単なインタビューで行った。結果の傾向だけでなく「なぜそちらを選んだか」という理由が重要な情報源になった。

テスト1:タスク管理アプリのホーム画面

パターンA:Stitch が最初に出した「情報密度が高く、機能が充実したホーム画面」。今日のタスク一覧、進捗グラフ、チームメンバーのアクティビティ、ショートカットボタンが一画面に並ぶ。

パターンB:「今日の重要タスク3件だけを大きく表示する、シンプルなホーム画面」とプロンプトを変えて生成したもの。情報量は少ないが、何をすべきかが一目で分かる。

結果:20人中14人がパターンBを選んだ。「何から手をつけるか迷わない」「Aは情報が多すぎて疲れる」という回答が多かった。初めて見たときの印象では、Stitch の最初の出力(パターンA)の方が「充実していていいな」と感じた自分の判断とユーザーの判断が食い違った。

テスト2:オンボーディング画面のフロー

パターンA:Stitch が生成した「1画面に多くの情報を詰め込んだオンボーディング」。サービスの特徴を3つ説明し、初期設定を同じ画面で行える構成。効率的に見えるが情報量が多い。

パターンB:「1画面1ステップで進むオンボーディング」。各画面は1つのメッセージだけで、ステップバーで進捗が分かる。画面数は多いが、各画面が単純。

結果:20人中16人がパターンBを選んだ。「一つずつ理解しながら進めた」「Aは最初から覚えることが多くて不安」という声があった。ここでも「効率的に見えるUI(A)」より「1ステップずつ丁寧に進むUI(B)」が支持された。

テスト3:ECサイトの商品詳細ページ

パターンA:Stitch が生成した「商品情報を充実させたデザイン重視の詳細ページ」。大きな商品画像ギャラリー、詳細な仕様情報、関連商品、レビュー——情報が豊富で見た目も洗練されている。

パターンB:「購入決定に必要な情報だけを上部に集中させ、その他は下にスクロール」という構成。価格・サイズ選択・カートボタンをファーストビューに集中させた。

結果:20人中12人がパターンBを選んだ。ここは他の2テストより拮抗した。「すぐ買うときはBの方がラク」という声と「じっくり選ぶときはAの方が安心」という声が分かれた。購買意図によって好みが変わる結果だった。

A/Bテストから見えてきたこと

3つのテストを通じて、いくつかの傾向が見えてきた。

Stitch の「デフォルト出力」は情報密度が高くなりやすい

Stitch が最初に生成するUIは「機能が充実していて見た目も良い」ものが多い。これはStitchが学習しているデザインの参考例(ポートフォリオサイト、デザインショーケース)が「見た目で魅力を伝えるもの」に偏っているためかもしれない。しかし実際のユーザーが求めるのは、多くの場合「すぐ使えて迷わないUI」だ。この差を意識せずにStitchの初稿をそのまま使うと、「デザイナーには好評だがユーザーには使いにくい」UIになるリスクがある。

「シンプル」をプロンプトで指定することの重要性

テスト2・3のパターンBは、「情報量を絞る」「1ステップ1アクション」という指定をプロンプトに明示的に加えたことで生成した。Stitch はデフォルトでは機能の充実を目指す傾向があるため、「シンプルにする」「情報を絞る」「初心者が迷わない」という制約をプロンプトに書かないと、ユーザーにとってシンプルなUIは出にくい。

「デザインとして良い」と「ユーザーにとって使いやすい」は違う

最も大きな学びは、この2つが一致しないケースが多いということだ。デザイナーとして「これは良いUI」と感じる出力(Stitch の初稿)と、実際のユーザーが「使いやすい」と感じるUI(シンプル版)が異なることが多かった。

Stitch はデザインの美しさを追求するが、ユーザビリティは別の評価軸だ。Stitch の出力を評価するとき「デザインとして良いか」だけでなく「このユーザーが実際に使えるか」という問いを持つことが、より良いUI設計につながる。

Stitch でのA/Bテスト活用の方法

逆に考えると、Stitch はA/Bテストの仮説生成ツールとして非常に有効だ。「こっちのレイアウトとこっちのレイアウト、どちらが良いか」を簡単に生成して比較できる。これまでは「2パターン用意する」こと自体にコストがかかり、A/Bテストの仮説数が限られていた。Stitch を使えば「10パターン生成して、最も異なる2つを選んでテストする」という選択ができる。

  • ステップ1:テストしたい画面のUI候補を Stitch で5〜10パターン生成する
  • ステップ2:最も異なるアプローチの2パターンを選ぶ(情報密度・レイアウト構造・CTA位置など)
  • ステップ3:Figmaでプロトタイプを作成(または静的画像をユーザーに見せる)
  • ステップ4:ターゲットユーザー10〜20人にどちらが使いやすいかを確認する
  • ステップ5:理由のインタビューを行い、次の改善方針を決める

よくある質問(FAQ)

Q1. A/Bテストは何人のユーザーが必要ですか?

A. 定性的な傾向を見るためなら5〜10人でも価値ある情報が得られます。統計的に有意な差を出すには100人以上が必要ですが、設計フェーズでの「方向性の確認」なら少数での実施で十分です。重要なのは人数より「理由を聞くこと」です。

Q2. Stitch で生成したUIをそのままA/Bテストに使えますか?

A. 静的な画像を見せる形式なら使えます。インタラクティブな操作を確認したい場合はFigmaでプロトタイプを作る必要があります。設計フェーズのA/Bテストなら「どちらのレイアウトが使いやすそうか」を問う方法が最も手軽で、Stitch のスクリーンショットを並べるだけで実施できます。

Q3. A/Bテストの結果で「どちらが良いか」が割れた場合はどうすれば?

A. 割れた場合は、ユーザーの「使い方の文脈」に依存する可能性があります。「初回利用時はAが良い、慣れたらBが良い」のように、ユーザーのフェーズや利用シーンで最適解が変わることがあります。インタビューで「どんなときにこのUIを使うか」を聞くことで、文脈による使い分けの判断ができます。

Q4. A/Bテストで「デザインとして良い方」が負けることはよくありますか?

A. 私の経験では、デザイナーが「これが良い」と思ったUIがユーザーテストで負けることは珍しくありません。デザイナーはデザインを評価する眼を持っているため、「情報密度が高い・洗練されたUI」を好む傾向があります。実際のユーザー(特に初心者・高齢者)はシンプルさを強く好む傾向があります。

Q5. A/Bテストをしない場合、Stitch の出力をどう評価すれば良いですか?

A. 「自分がターゲットユーザーと全然違う場合」は特に注意が必要です。デザイナー・エンジニアのような専門職がターゲット外の一般ユーザー向けUIを作る場合、「自分が使いやすい」という判断が当てにならないことがあります。チェック方法としては、ターゲットに近い人(年齢・職種・デジタルリテラシー)に5分間操作してもらうだけでも、重要な問題が見つかることが多いです。

Q6. Stitch でA/Bテスト用のUIを効率よく生成するコツはありますか?

A. 「制約を変えたプロンプト」を意図的に使う方法が効果的でした。例えば「情報量を最大化したバージョン」と「情報量を最小限に絞ったバージョン」、「CTA(行動促進ボタン)を上部に置いたバージョン」と「CTAを下部に置いたバージョン」のように、一つの変数だけを変えたプロンプトを使うと、テスト結果から「何が効いたか」を特定しやすくなります。

まとめ

Google Stitch で作ったUIをA/Bテストした経験から、「AIが出す良いUI」と「ユーザーが使いやすいUI」の間にギャップがある場合があることが分かった。このギャップを埋めるのが、ユーザーテストだ。

Stitch は「デザインの候補を速く作るツール」として優秀だが、最終的に「どのUIが正しいか」を決めるのはユーザーだ。Stitch をスタート地点にして、ユーザーからの評価でゴールを設定するプロセスを組み合わせることで、AIの速度とユーザー中心設計の精度を両立できる。それがUIデザインにおける Stitch の最も賢い使い方だと、今は思っている。

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