医療系サービスのUIを Google Stitch で設計した——「安心感」を作ることの難しさ

医療系サービスのUIを設計したことがある人なら分かると思うが、「安心感のあるUI」を作ることは、「かっこいいUI」を作ることとは全然違う。ユーザーが体調や健康に関わる情報を扱うとき、デザインに少しでも「信頼できない」雰囲気があると、すぐ離脱する。これは他の業界より格段に難しい課題だ。

私が Google Stitch を使って医療系ヘルスケアアプリのUIを設計したのは、3ヶ月前のことだ。一般的なSaaSのUI設計より明らかに難しかった部分と、逆に Stitch が意外に力を発揮した部分を記録する。

結論から言うと

医療系UIを Google Stitch で作る場合、「清潔感・シンプルさ・文字の読みやすさ」を軸にしたプロンプトを書けば、ある程度信頼感のあるUIが出る。しかし「不安を取り除くための情報設計」「エラー時のメッセージの言葉遣い」「プライバシーへの配慮を感じさせるデザイン」といった医療特有のUX要件は、プロンプトで詳細に指定しないと Stitch だけでは出てこない。医療UIは「見た目の信頼感」より「体験としての安心感」の方が重要で、後者を作り込む工程は人間の判断が必要だ。

今回設計したサービスの概要

設計したのは、慢性疾患(主に糖尿病・高血圧)を持つ40〜70代のユーザーが日常的に使う体調管理アプリだ。機能は、血糖値・血圧の記録、服薬管理、かかりつけ医へのデータ共有、体調の変化アラート。ユーザーは医療リテラシーにばらつきがあり、スマートフォン操作に不慣れな層も含む。

このターゲット設定と要件を持って Stitch に向き合うと、「汎用的なヘルスケアアプリのUI」を出すことは簡単でも、「このユーザーが安心して毎日使えるUI」を出すことは全然違う難しさがあることが分かった。

一般サービスと医療UIの違い

一般サービスのUIでは「使いやすさ・かっこよさ・速さ」が優先されることが多い。医療UIではこれらに加えて「安心感・明確さ・間違えにくさ」が必須になる。例えばボタンを押す前に「本当にこれでいいか」を確認できる構造、エラーが出たときに「何を直せばいいか」が一目で分かるメッセージ、数値を記録するときに「正しく入力できているか」を確認できるUI——これらは医療の文脈では特に重要だ。間違いが健康被害につながる可能性があるからだ。

プロンプト設計の特殊性

一般サービスのUI設計では「かっこいい・スタイリッシュ」を狙う記述をすることがある。医療UIでは逆だ。「かっこよさより読みやすさを優先する」「装飾を最小限に抑え、必要な情報だけを表示する」「派手なアニメーションを使わない」——これらを明示的にプロンプトに書く必要があった。医療UIのプロンプトは「使うな」リストを作ることが、「使え」リストと同じくらい重要だと感じた。

うまくいったこと

医療UIの設計で Google Stitch がうまく機能した場面を具体的に書く。

ダッシュボードの情報整理

血糖値・血圧・体重・服薬状況を一画面で確認できるダッシュボードを設計したとき、Stitch が出したUIは「情報の優先順位」が自然だった。直近の数値を大きく表示し、トレンドグラフを補助的に配置、服薬アラートを目立つ位置に置く——この構造はユーザーが最初に確認したいものを自然に導線として配置していた。

プロンプトに「患者が毎朝最初に確認する画面」「今日の状態を一目で把握できる構成」と書いたことで、Stitch が「最優先情報を最も見やすい場所に置く」レイアウトを自然に選んでくれた。

フォームのシンプル化

血糖値・血圧を記録するフォームは、スマートフォン操作が苦手なユーザーでも間違えにくい設計が必要だ。Stitch に「60代以上のユーザーが一人でも操作できるシンプルな数値入力フォーム。大きなテキストフィールド、明確なラベル、確認ボタンを含む」と書いたところ、テキストが大きく余白が十分で操作しやすいフォームが出てきた。これは想定以上に良い出力だった。

カラーパレットの選択

医療UIのカラーは「青・白・グレー」を基調にすることが多い。Stitch に「信頼感・清潔感・安心感を伝える医療系アプリ、ブルーとホワイトを基調としたカラーパレット」と指定すると、自然に医療UIらしいカラーが選ばれた。派手な色使いや高彩度の色が自動的に避けられており、この部分は Stitch の学習データが機能していると感じた。

詰まったこと

一方で、医療UIならではの課題に Stitch だけでは対応できなかった部分が複数あった。

「不安を取り除く」言語設計

医療UIで最も難しかったのは「言葉の設計」だ。例えばエラーメッセージで「入力エラー」と書くのと「数値を確認してください」と書くのでは、ユーザーが感じる不安の大きさが全然違う。「削除」ボタンを「記録を取り消す」と表現するだけで、操作への心理的ハードルが変わる。

Stitch が出してくれるのはレイアウトとビジュアルで、言葉は仮テキストだ。医療UIの場合、この仮テキストを「医療コンテキストに適切な言葉」に置き換える作業が通常のUIより格段に重要で、Stitch の後に大きな作業として残った。

緊急時・異常値の表現

血糖値が危険な値になったときのアラート表示や、服薬を忘れた場合の通知——これらは「適切な緊迫感」を伝えながら「パニックにさせない」という相反するデザイン要件がある。Stitch に「緊急アラートのUI」を作らせると、派手すぎるか地味すぎるかの両極端になりやすく、「医療的な緊迫感と冷静さを両立する」バランスをとることが難しかった。

この問題は、医療UXの専門知識と実際の患者・医療従事者へのインタビューが不可欠な部分で、Stitch はあくまでビジュアルの補助ツールとして使うしかなかった。

プライバシーへの配慮の表現

医療データは最も機密性の高い個人情報だ。UIの随所に「このデータは安全に管理されています」という信頼の表現が必要になるが、これを「視覚的にどう表現するか」は難しい問題だ。南京錠アイコン・シールドアイコン・「暗号化済み」のテキストラベル——これらをどのタイミングでどこに配置するかは、Stitch では自動的に判断しない。プロンプトに「プライバシー保護の信頼性を視覚的に示す要素を含める」と書くことで、ある程度対応できたが、配置の文脈は人間が判断する必要があった。

医療・ヘルスケアUIのプロンプトで効果的だった表現

3ヶ月の設計を通じて、医療・ヘルスケアUIを Stitch で作る際に効果的だったプロンプト表現をまとめる。

  • 「操作ミスが健康に影響する可能性があるため、間違えにくい設計を最優先する」
  • 「60〜70代のスマートフォン初心者が一人で操作できる、シンプルで直感的なUI」
  • 「不安を取り除く温かみのある表現と、医療機関レベルの信頼感を両立する配色・フォント」
  • 「重要な操作の前に確認ステップを設ける(例:記録前・送信前の確認モーダル)」
  • 「エラー状態は色・アイコン・テキストの3要素で伝える(色覚異常対応)」

よくある質問(FAQ)

Q1. 医療系UIに Google Stitch は使えますか?

A. 使えますが、一般のWebサービスより多くの調整が必要です。特に「言葉の設計」「緊急状態の表現」「プライバシーへの配慮」は Stitch の出力後に人間が細かく判断する必要があります。Stitch は「視覚的な方向性の初稿」として機能しますが、医療UXの専門知識との組み合わせが必須です。

Q2. 医療UIを作るにあたって薬機法などの法律は関係しますか?

A. 関係します。医療機器プログラムに該当するアプリは薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の規制を受ける場合があります。UIの設計段階から「このサービスは規制対象か」を確認し、必要に応じて弁護士・薬事コンサルタントに相談することが重要です。デザインの問題ではなく、事業の問題です。【要確認:最新の薬機法・プログラム医療機器規制】

Q3. 高齢者が使いやすい医療UIで特に重要な要素は何ですか?

A. フォントサイズの大きさ(本文18px以上)、タッチターゲットの大きさ(56px以上)、一画面の情報量を少なくすること、操作の手順を少なくすること(1操作で完了できる構造)、次にやることを明示すること(「次のステップ」の明確な導線)——これらが最も重要でした。

Q4. 医療データを扱うUIのプライバシー設計でデザインができることは何ですか?

A. データの用途を明示するラベル(「このデータはかかりつけ医のみに共有されます」)、セキュリティを示すビジュアル(南京錠アイコン・シールドアイコン)、データ共有の同意プロセスを明確に分かる導線設計——これらをUIの適切な場所に配置することが、デザインとして貢献できる領域です。

Q5. 医療UIのユーザーテストはどのように行うべきですか?

A. 実際の患者(特にメインターゲットに近い年齢・健康状態のユーザー)を含めたユーザーテストが不可欠です。医療UIは「デザイナーや若いエンジニアが問題なく使える」だけでは不十分です。ターゲットに近いユーザーが実際に操作する場面を観察することで、見えていなかった「詰まりポイント」が必ず出てきます。

Q6. Stitch と医療専門家の連携はどうすれば?

A. Stitch で作ったUIモックを医療従事者(看護師・薬剤師・かかりつけ医)に見せてフィードバックを得るプロセスを取り入れることをすすめます。「この表現は患者を不安にさせる」「この順序では操作ミスが起きやすい」という知見は、医療現場の経験からしか得られません。Stitch は素早くモックを作るためのツールとして、専門家との対話を加速させる役割で使うことが最も効果的でした。

まとめ

医療系UIを Google Stitch で設計した3ヶ月間を振り返ると、「見た目の信頼感はStitchで作れる、体験としての安心感は人間が作る」というのが正直な評価だ。

医療UIの設計は、UIデザインの技術だけでなく、ユーザーの心理・医療の文脈・法的要件への理解が不可欠だ。Stitch はその中の「ビジュアルのたたき台を速く作る」という役割において、確かに価値を発揮した。ただし、医療UIが持つべき「誰かの健康に関わる責任」の重さは、AIが肩代わりできるものではない。その責任を自覚しながら、Stitch を正しいポジションで使うことが大切だと感じている。

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