スタートアップの0→1フェーズで Google Stitch を使い倒した記録

スタートアップの立ち上げ期は、時間もお金も人も足りない。フルタイムのデザイナーを雇う余裕はない。でも「見た目がひどいMVP」は、ユーザーにも投資家にも刺さらない。この矛盾をどう解決するか——Google Stitch は、その一つの答えになった。

私が関わったスタートアップで Google Stitch を使ったのは、0→1フェーズ(アイデアから最初のプロダクトリリースまで)の約4ヶ月間だ。デザイナーなしで、PMと開発エンジニアの2人チームで、どのように使ったか。全部書く。

結論から言うと

Google Stitch はスタートアップの0→1フェーズで「デザイナー不在の穴を埋める」ツールとして機能した。特にMVPのプロトタイプ作成、ユーザーインタビュー用のモックアップ、投資家向けデモのUI——これらを素早く作れたことで、本来2〜3ヶ月かかる「最初のUIができるまで」が数週間に短縮できた。ただし「完成品のUIをStitchだけで作る」には限界があり、リリースに向けた詳細設計はエンジニアとの協力が必要だった。

スタートアップの0→1フェーズとUIの関係

0→1フェーズのスタートアップにとってUIは、3つの役割を持つ。①ユーザー検証のためのツール(「このUIで使いたいか」を確認するための媒介)、②投資家へのビジョン表現(「作れる」ことを証明するためのデモ)、③チーム内の共通認識(「何を作るか」をビジュアルで合わせるための地図)。

これらを短期間で揃えるためには、通常はデザイナーが必要だ。でも0→1フェーズのスタートアップが最初からデザイナーを確保できることは少ない。この「デザイナーがいないがUIが必要」というギャップに、Google Stitch が入り込んだ。

デザイナー不在で起きていた課題

Stitch を使い始める前、私たちのUIは「エンジニアがBootstrapテンプレートをそのまま使ったもの」だった。機能はするが、見た目が古くてブランドもない。ユーザーインタビューで「使いにくい」ではなく「なんか信用できない感じがする」という反応が返ってきたことがある。UIの品質が信頼性の判断材料になるという現実があった。

また投資家へのデモで「このUIで本当に使ってもらえると思っているの?」と言われたことも、UIに向き合うきっかけになった。プロダクトの価値はあるのに、UIの粗さがそれを伝える邪魔をしていた。

Google Stitch を使い始めた経緯

スタートアップの知人から「デザイナーなしでもそれなりのUIが出る」と聞いたのがきっかけだ。試しに自分たちのサービスのダッシュボードをプロンプトで作ってみたら、それまでのBootstrapテンプレートより明らかに良いUIが出た。「これで行けるかも」と思い、本格的に使い始めた。

0→1フェーズでの具体的な使い方

4ヶ月間でどんな場面に Stitch を使ったか、時系列で整理する。

フェーズ1:ユーザーインタビュー用モックアップ(1〜2ヶ月目)

最初の1〜2ヶ月は「何を作るべきか」を検証する時期だ。ユーザーインタビューで「こういう画面があったら使いますか?」を確認するために、Stitch でモックアップを作った。

このフェーズでの使い方は「スピード重視」だった。インタビュー前日に「こういう仮説がある」と決まったら、その日中にStitchでUIを作る。完成度は問わない。インタビューで見せるためだけのUIなので、「どんな画面が欲しいか」の議論を引き出せれば十分だ。

Stitch を使うことで、「明日のインタビューに間に合わせる」が可能になった。以前なら「デザイナーに頼む→数日かかる→インタビューに間に合わない」というサイクルだった。

フェーズ2:MVPプロトタイプの初稿作成(2〜3ヶ月目)

検証が終わって「これを作ろう」が決まると、MVPのUIを作る段階に入る。Stitch でメイン画面の初稿を作り、エンジニアに渡して実装してもらう流れを取った。

このフェーズで気をつけたのは「実装可能かどうかの確認」だ。Stitch が出したUIが技術的に実装困難だと、エンジニアから「これ、工数かかりすぎる」という指摘が来る。Stitch で出したUIをエンジニアと一緒に見ながら「この部分のデザインは簡略化できる?」という対話を重ねることで、理想と実装可能性のバランスを取った。

このフェーズでの Stitch の役割は「エンジニアとのUI合意形成ツール」でもあった。言葉で「こういう画面にしたい」より、Stitch で出したビジュアルを見せる方が、合意が速かった。

フェーズ3:投資家向けデモUIの作成(3〜4ヶ月目)

投資家ミーティング前に「見せられるUI」が必要になった。実際に動くプロダクトはあるが、見た目がまだ荒い。投資家に「ビジョン」を伝えるためには、「完成形に近いUI」を見せる必要があった。

Stitch で「理想的な完成形のUIデモ版」を作った。実際に動くプロダクトではなく、「こういうUIになる」という将来ビジョンを示すためのビジュアルだ。プレゼン資料にスクリーンショットを埋め込むことで、投資家が「完成したらどんなプロダクトになるか」をイメージしやすくなった。

投資家への説明では「現在は基本機能が動くMVPがあり、デザインはこの方向で開発中です」という文脈でStitchの出力を見せた。「AIで作ったデモビジュアルです」と透明性を持って伝えたが、反応は良かった。

Stitch だけでは難しかったこと

4ヶ月使って、Stitch だけでは解決できなかった課題も正直に書く。

  • ブランドの一貫性:複数の画面を別々のプロンプトで作ると、細部のスタイル(ボタンの形・余白・フォントウェイト)がバラつく。デザインシステムがないため、「なんとなく似ている」程度の統一感しか保てなかった
  • 複雑なインタラクション:モーダル・ドロップダウン・ドラッグ&ドロップのような動的なUIコンポーネントは、静的なStitchの出力では表現しきれなかった
  • 実装との乖離:StitchのUIがきれいに見えても、実装するとCSSが複雑になりすぎて「この部分はシンプルにしてほしい」とエンジニアから指摘されることがあった
  • アクセシビリティ:カラーコントラスト・フォントサイズ・タッチターゲットなどのアクセシビリティ要件は、Stitch任せにすると見落とすことがある

デザイナーが入ったタイミングでの引き継ぎ

3ヶ月目に外部のフリーランスデザイナーに入ってもらった。Stitch で作ったUIをデザイナーに渡したとき、「方向性が決まっているので進めやすい」という言葉があった。Stitch のアウトプットが「デザイナーへの引き継ぎ資料」として機能した。

デザイナーはStitchのUIを「参考」として、Figmaで一から設計し直した。それでも方向性の共有ができていたおかげで、最初のFigmaデザインレビューでの修正が少なく済んだ。Stitch は「デザイナーが入るまでの代替」ではなく「デザイナーに渡すためのたたき台」として機能した。

よくある質問(FAQ)

Q1. スタートアップで Google Stitch を使うと、デザイナーは不要になりますか?

A. 不要にはなりません。初期フェーズの「デザイナーがいない間のつなぎ」としては機能しますが、プロダクトが成長するにつれてデザイナーの専門知識(ブランド設計・デザインシステム・アクセシビリティ)が必要になります。Stitch を使うことで「デザイナーを雇うタイミングを少し後ろにずらす」ことはできますが、不要にはなりません。

Q2. 投資家向けのデモUIを Stitch で作ることは問題ありませんか?

A. 倫理的な問題はないと思います。ただし「これは将来的なビジョンUIであり、現在の実装状態とは異なります」という透明な説明を添えることが重要です。Stitch 生成のUIを実際の動作プロダクトとして見せることは誤解を招く可能性があります。

Q3. ユーザーインタビューにはどのくらいのUIクオリティが必要ですか?

A. 「使う場面が想像できるクオリティ」が最低限です。完成度より「どこに何があるか」が見えること、「これは何のボタンか」がわかること——この2点が満たされれば、インタビューの目的(使いたいか・使いやすいか)は達成できます。Stitch の初稿レベルでも十分に機能することが多かったです。

Q4. エンジニア1人・PM1人のチームで Stitch は使えますか?

A. 使えます。私たちのチームはまさにこの構成でした。PMが Stitch でUIを作り、エンジニアと一緒に見ながら実装可能な範囲を確認し、エンジニアが実装する——このフローは最小チームでも機能します。

Q5. MVPのUIに Stitch を使うとき、最初に作るべき画面はどれですか?

A. 「ユーザーが最初に見る画面」から始めることをすすめます。ランディングページまたはサービスのメイン画面(ダッシュボードやホーム)だ。この画面が「このプロダクトは何か」を伝える最重要UIであり、ここの方向性が決まると他の画面の設計が進めやすくなります。

Q6. スタートアップが Stitch を使う上での最大のメリットは何ですか?

A. 「意思決定の速度が上がること」です。「こんなUIにしたい」という議論を言葉だけでするとき、チームメンバー全員の頭の中で「こんな」の形が違う。Stitch で10分で形にすることで、議論の対象が「言葉の解釈」から「実際のUI」に変わります。0→1フェーズで最も大切な「速く決める・速く試す」をUIの側面で支援してくれるツールでした。

まとめ——Stitch はスタートアップの「時間を買うツール」だ

スタートアップの0→1フェーズで Google Stitch を使い倒した4ヶ月間を振り返ると、このツールが最も貢献したのは「時間を買うこと」だったと思う。デザイナーがいない時間に、UIが完全に空白になることを防ぎ、ユーザー検証・投資家説明・チーム合意を回し続けられた。

完璧なUIは作れなかった。ブランドの一貫性も、アクセシビリティも、詳細なインタラクションも、後からデザイナーに整えてもらった。でも「最初の一歩を踏み出すためのUI」としての役割は、十分に果たしてくれた。

0→1フェーズのスタートアップにいる人に伝えたいのは、「UIができるまで動けない」という思考から抜け出してほしいということだ。Stitch があれば今日の午後にはUIの初稿ができる。明日にはユーザーに見せられる。行動のスピードがスタートアップの生命線なら、そのスピードを上げるためのツールとして、Stitch は今すぐ使える選択肢だ。

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