考えるより先に書く。エンジニアがメモ習慣を変えてから、変わったこと

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「なんとなく頭でわかっているのに、うまく言語化できない」

バグの原因を追っているとき、設計の選択肢を比べているとき、コードレビューのコメントを書こうとしているとき。そういう場面で「頭の中がもやっとしたまま進められない」という経験は、多くのエンジニアが持っているはずです。

そのもやつきの正体は、思考が「頭の中だけで完結しようとしている」ことにあります。人間の脳は、複数の選択肢を同時に保持しながら比較するのが苦手です。頭の中でぐるぐると考え続けるより、紙やメモアプリに書き出した瞬間に、一気に整理が進む感覚を覚えた人は多いのではないでしょうか。

この記事では、「考えるより先に書く」というメモの使い方が、エンジニアの仕事にどんな変化をもたらすのかを具体的に解説します。結論から言うと、メモは「記録する道具」ではなく「思考を加速させる道具」として使うことで、エンジニアの仕事の質は大きく変わります。

この記事で分かること:

  • エンジニアの思考が「詰まる」メカニズムとその解決策
  • ゼロ秒思考とは何か、エンジニア向けに整理した解説
  • メモを活用すべき3つの具体的なエンジニアシーン
  • デジタルと手書きの使い分け方
  • Audibleで聴けるメモ・思考術のおすすめ本5冊
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エンジニアの思考が「詰まる」本当の理由

エンジニアは日々、複雑な問題に向き合っています。バグの原因特定、機能設計の検討、技術選定の比較検討。こういった作業では、「なんとなく頭の中に答えがある気がするのに、言語化できない」という状態に陥りやすいです。この状態を、ここでは「思考の詰まり」と呼びます。

ワーキングメモリの限界が引き起こすもやもや

人間の脳が一度に意識的に処理できる情報量には限りがあります。認知心理学ではこれを「ワーキングメモリの容量」と呼び、一般的に4〜7項目程度が限界とされています。

技術的な問題を解くとき、エンジニアは複数の変数・条件・選択肢を同時に頭の中で保持しようとします。その数がワーキングメモリの容量を超えた瞬間、思考は「詰まり」ます。「あの条件を考えると、こっちの選択肢はダメで……でも待って、もう一個の条件も考えると……」という状態です。

実際に経験してみて分かったのは、頭の中で考え続けることには「見えない上限」があるということです。その上限を超えたとき、脳は新しい情報を処理するどころか、すでに保持していた情報も曖昧になり始めます。これが「考えているのに前に進まない」という感覚の正体です。

「外部記憶装置」としてのメモの役割

メモに書き出す行為は、脳のワーキングメモリを拡張する「外部記憶装置」を使うことと同じです。「A案にはこういうメリットがある」「B案にはこういうリスクがある」という情報を紙に書き出した瞬間、脳はそれを保持し続けることから解放されます。

空いたワーキングメモリに、新たな考えが流れ込んでくる。「あ、そういえばCという選択肢もあった」「B案のリスクはXという方法で回避できるかも」という思考の展開が、メモを書いた後に加速するのはこのためです。

「考えてから書く」ではなく「書きながら考える」。この順序の逆転が、思考の詰まりを解消する根本的な解決策です。

ゼロ秒思考とは何か。エンジニア視点で整理する

ゼロ秒思考とは、赤羽雄二氏が提唱するメモトレーニングの手法のことです。具体的には、「A4用紙を横向きに置き、テーマを書いてから1分間で4〜6行の気づきを書き殴る」という極めてシンプルなものです。「ゼロ秒」とは、考えることに時間をかけず、即座に反応できる思考の速さを指しています。

A4横向き・1分間・書き殴りの3原則

ゼロ秒思考の手順はシンプルです。

  • A4用紙を横向きに使う:縦向きより横向きの方が、思考が広がりやすいとされています。また、ノートではなく白紙を使うことで「きれいに書かなければ」というプレッシャーがなくなります。
  • 1分間で4〜6行書く:タイマーを1分にセットし、テーマについて思いついたことをひたすら書き出します。1行に1つのアイデアや気づきを入れるのが目安です。
  • 書き殴る(綺麗に書かない):後で読み返せる字であればよく、丁寧に書く必要はありません。書く速度を優先することで、無意識にある思考が引き出されやすくなります。

実際に試してみると、1分間でA4一枚を書き切ることの難しさと、それを続けていくうちに思考がどんどん引き出されていく感覚の変化に気づきます。1日10枚を目安に続けると、2〜3週間で思考のスピードと精度が変わってきます。

なぜ「1分」という制約が思考を加速させるのか

「1分」という時間制約は、ゼロ秒思考において重要な役割を持っています。人間は時間に余裕があると「完璧に書こう」「論理的に整理してから書こう」という意識が働き、結果として何も書けなくなることがあります。

1分という制約を設けることで、「とにかく今思っていることを書く」という行動が優先されます。完璧でなくてよい、未完成でよい、矛盾していてもよい。という前提の下で書いた内容の中に、実は核心的なアイデアや本質的な問いが隠れていることが多いです。

エンジニアの仕事では、「設計をきれいに整理してから実装する」という習慣が強い人ほど、この「まず書き出す」というアプローチは最初は違和感を覚えるかもしれません。しかし、その違和感を超えたところに、思考の加速があります。

エンジニアがメモを活用すべき3つの場面

「メモは大事」とわかっていても、具体的にどの場面で使えばいいかが曖昧だと習慣化しません。ここでは、エンジニアの仕事の中でメモが特に効果を発揮する3つの場面を具体的に解説します。

バグの原因調査と問題の切り分け

バグを調査するとき、多くのエンジニアは「頭の中で仮説を組み立てながらコードを追う」というアプローチを取ります。しかし、複雑な問題ほど、この「頭の中だけで追う」方法はワーキングメモリの限界にぶつかります。

デバッグ時にメモを使う効果的な方法は次の通りです。

  • 現象の記録:「どんな条件のときに発生するか」を一行で書く
  • 仮説の列挙:考えられる原因を全部書き出す(まず5個以上)
  • 検証順の決定:最も確認コストが低い仮説から順番をつける
  • 確認結果の記録:「試した→結果」を都度書いて仮説を潰していく

実際にこの手順でデバッグを行うようになってから、「同じ場所をぐるぐると確認し続ける」という無駄な時間が大幅に減りました。書くことで「試したこと・試していないこと」が可視化されるためです。

設計の検討と選択肢の比較

新機能の設計を検討するとき、複数の実装アプローチが浮かぶことがあります。A案とB案をどちらにするか、その判断を「頭の中で考え続ける」より、「紙に書いて比較する」方が圧倒的に速く、かつ良い判断ができます。

おすすめのフォーマットは、A案・B案それぞれについて「メリット」「デメリット」「実装コスト」「リスク」を4行で書き出すだけです。書き出した瞬間に、「あ、B案はここのリスクが大きすぎる」「A案で行けるけど、Cという変形案もあるかも」という気づきが自然と生まれます。

設計判断のスピードと質は、「どちらが正しいか考え続ける時間」より「選択肢を書き出して比較する時間」の方がはるかに短く、結果も優れています。

1on1・ミーティング前の準備と思考整理

1on1やプロジェクト会議の前に「何を話すか」を頭の中だけで準備しているエンジニアは多いですが、会議が終わった後に「あれを言いそびれた」「伝えたかったことがうまく伝わらなかった」という経験はありませんか?

会議前の5分間に「今日話したいこと・確認したいこと・伝えたいこと」を箇条書きで書き出すだけで、会議中の発言の質が大きく変わります。書き出すことで、「自分が本当に何を優先したいのか」が明確になるためです。

また、書いたメモを会議中に手元に置いておくことで、話が脱線しても自分の議題に戻りやすくなります。実際にこれを習慣にしてから、1on1での相談の質が上がり、マネージャーからの反応も変わったという体感があります。

デジタルか手書きか。エンジニアのメモ環境の選び方

「メモを習慣化したい」と思ったとき、多くのエンジニアが最初に迷うのは「デジタルか手書きか」です。結論から言えば、思考の整理・アイデア出しには手書き、情報の蓄積・検索には デジタルと使い分けるのが最も効果的です。

手書きが思考の整理に優れる理由

手書きがデジタル入力より思考整理に優れる理由は、主に3つあります。

一つ目は、キーボードよりも書くスピードが遅いことで、「考えながら書く」という行為が促進されるためです。タイピングは速すぎて、考える前に指が動いてしまうことがあります。二つ目は、紙に書く行為が脳の広い範囲を使うとされており、記憶の定着や創造的な思考を促しやすいためです。三つ目は、通知がない・アプリを開く必要がない・バッテリーが切れないという、デジタル特有の「邪魔」がないためです。

実際に試してみた感想として、同じ問題について「頭の中で考える」「キーボードで打つ」「手書きで書く」の3パターンを比較したとき、手書きが最も速く・深く思考を整理できると感じました。

デジタルメモが力を発揮するシーン

手書きが思考整理に優れている一方で、デジタルメモが手書きを上回る場面もあります。

  • 検索して後から参照したいとき:技術メモ・議事録・仕様の記録はデジタルで。手書きは後から探せません。
  • チームと共有したいとき:NotionやConfluenceなどの共有ツールでのメモはデジタル一択です。
  • コードや技術情報を含むとき:コマンド・エラーメッセージ・コードスニペットはデジタルの方が使いやすいです。
  • 外出先でスマホしかないとき:思いついたアイデアをとにかく記録するならデジタルで十分です。

推奨するのは、「思考のための手書き + 蓄積のためのデジタル」というハイブリッド運用です。手書きで考えた内容の中から重要な気づきだけをデジタルに転記する、というフローを作ると両方のメリットを活かせます。

エンジニアにおすすめのメモ・思考術本5選

メモと思考の整理を深めたい方に向けて、Audibleで聴けるおすすめ本を5冊紹介します。

ゼロ秒思考。頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング

著者:赤羽雄二

A4用紙に1分間書き殴るだけで思考スピードが上がる「ゼロ秒思考」のメソッドを解説。エンジニアのバグ調査・設計検討・1on1準備に直結する実践的な一冊。Audibleで通勤中に聴いて、その日から手書きメモを始められます。

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メモの魔力

著者:前田裕二

メモを「記録」から「思考」の道具へと昇華させる方法を説く。FACT(事実)→ABSTRACT(抽象化)→APPLICATION(転用)という独自のフレームワークは、エンジニアの問題解決思考にも応用できます。ビルド待ちに1章ずつ聴くのに最適な密度感です。

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時間術大全。人生が本当に変わる「87の時間ルール」

著者:ジェイク・ナップ、ジョン・ゼラツキー

GoogleとYouTubeの元デザインスプリント考案者による時間管理の実践書。「ハイライト」を設定して1日の核心を決めるアプローチは、エンジニアのタスク優先度付けに直結します。通勤中に聴くと、その日の「最重要タスク」が見えてくる一冊です。

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1分で話せ。世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術

著者:伊藤羊一

「結論ファースト」で簡潔に伝える技術を解説。メモで思考を整理した内容を、チームやマネージャーにどう伝えるかの「出口スキル」を補完してくれます。コードレビューのコメント・MTG発言・テックブログの執筆にも応用できる、エンジニアの発信力を上げる一冊です。

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スタンフォード式最高の睡眠

著者:西野精治

睡眠研究の世界的権威がスタンフォード大学での研究成果をもとに、睡眠の質を最大化する方法を解説。思考の整理は「書く」だけでなく「眠る」ことでも行われます。良質な睡眠がアイデア整理・記憶定着・思考力回復に与える影響を知ることで、メモ習慣と睡眠改善を組み合わせた最強の学習サイクルが作れます。

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よくある質問(FAQ)

Q1. ゼロ秒思考を続けるにはどれくらいかかりますか?

個人差はありますが、毎日10枚を書き続けると2〜3週間で思考のスピードと明確さが変わってきます。最初の1週間は「書けない」「何を書けばいいかわからない」という壁に当たることが多いですが、それを超えると書き出すこと自体がスムーズになります。まず1週間、1日5枚から始めることをおすすめします。

Q2. デジタルメモアプリはどれがおすすめですか?

エンジニアには Notion、Obsidian、Bear などが人気です。Notion はチーム共有・プロジェクト管理との連携が強く、Obsidian はリンク型で知識をネットワーク化するのに向いています。Bear はシンプルで日記・アイデアメモに最適です。まずはシンプルなアプリから始め、自分のワークフローに合わせて使い分けていくのがおすすめです。

Q3. メモを書いても後から見返さないのですが、意味がありますか?

あります。メモの価値は「後から読む」ことより「書いた瞬間に思考が整理される」ことにあります。ゼロ秒思考のように書き殴って捨てるメモですら、書く行為によって頭が整理され、次のアクションが明確になります。「後から参照したい情報」と「思考整理のために書くメモ」は別物と考えて、用途によって使い分けましょう。

Q4. バグ調査中にメモを書く時間がもったいない気がします

実際に試してみると逆のことに気づきます。メモなしで頭の中だけで追っていた時間の方が長く、同じ場所を行ったり来たりしていたことがわかります。「仮説を5個書いて、上から確認する」というだけで、調査の無駄な往復が減ります。5分かけてメモを書いても、それで30分の無駄な探索がなくなるなら十分に投資対効果があります。

Q5. メモの内容を他人に見せる必要はありますか?

思考整理のためのメモは、基本的に自分のためのものです。きれいに書く必要も、論理的に整理する必要もありません。ただし、設計の比較メモや1on1の準備メモは、チームや上司と共有することでコミュニケーションの質が上がることがあります。「思考のメモ(非公開)」と「共有のためのメモ(公開前提)」を最初から分けて考えると運用しやすくなります。

Q6. 手書きとデジタル、どちらで始めるべきですか?

思考整理が目的であれば、まず手書きから始めることをおすすめします。ツールの選択やアプリのセットアップに時間をかけるより、A4紙とペンをすぐに用意して始める方が圧倒的にハードルが低いためです。習慣化してから、デジタルの追加を検討するのが実際に続けやすいアプローチです。「完璧なツールを探す時間」が最大の敵です。

まとめ:「考えるより先に書く」を、今日から始めよう

エンジニアの仕事の多くは「考えること」で占められています。バグを追い、設計を検討し、伝え方を考える。そのすべての場面で、思考の質とスピードが仕事の質に直結します。

この記事でお伝えしたことを振り返ると:

  • エンジニアの「思考の詰まり」はワーキングメモリの限界が原因。書き出すことで解消できる
  • ゼロ秒思考は「A4横向き・1分・書き殴り」のシンプルな手法で、2〜3週間で効果が出る
  • バグ調査・設計検討・ミーティング準備の3場面でメモは特に効果的
  • 思考整理には手書き、蓄積・共有にはデジタル、という使い分けが最適
  • ゼロ秒思考・メモの魔力・時間術大全など、Audibleで聴けるおすすめ本が揃っている

今すぐ始められる最初の一歩は、A4用紙を1枚手に取り「今、仕事で一番気になっていること」というテーマで1分間書き殴ることです。書き終わった後に感じる「頭が軽くなった感覚」が、メモ習慣を続ける最大のモチベーションになります。

メモ術・思考法の本をより深く学びたい方には、Audibleで通勤中や作業の合間に聴くことをおすすめします。今なら30日間無料で試せます。

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